マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

『百円の恋』

2014年10月22日 | 映画

旦那と同い年の私は、今年二人そろって還暦になった。同い年の夫婦ってのは、当たり前だが、同じように年を取るので、旦那が定年を迎えた瞬間、なんだか、自分までも定年になったようで、複雑な心境なのである。

もう人生が終わったかのような寂寞と空しさが、ここ数日、心から離れない。

これじゃいけない!。この空しさを脱却するには映画しかないと、手元にある試写状の中から、ふと目に留まったのが、邦画の「百円の恋」だった。

内容や前評判を全く把握せずに、映画を見るのも一つの醍醐味で、情報がないからこそ、まっさらな状態で作品に向き合うことができる。

目の前に現れた主人公役の安藤サクラの無気力で怠惰な日常が突然目に入る。

髪を振り乱し、ジャージ姿でタバコをふかすしながらテレビゲームばかりやっている安藤サクラは、弁当屋を経営している母や出戻りの姉に激怒され、ついに家を出るはめになる。

あ、この展開はめっちゃ面白いぞ!

今度は食うために深夜の百円コンビニでレジを打つ安藤サクラの姿が目に入る。目が細いので、店長に「目つきが悪い」となじられる。

確かに本当に目つきが悪い。そして恋が始まり、恋が終わる。

単に物語はそれだけなのだが、ここで、画期的なのは、だらしない安藤サクラが、ある日突然、ボクシングに目覚めるのだ。

体を鍛えるために、走り、シャドウボクシングに精進する。どんどん、ぶくぶくに太った安東サクラの体から体脂肪が抜け、見る見るうちにアスリートになっていく。

ボクシング好きの私は、安藤サクラの役作りのたくましさに惚れ惚れするのである。ここまで本気でボクシングに向き合った日本の女優は彼女が初めてではないだろうか?

安藤サクラの作品を見るのがこれが初めてである。

父は奥田瑛二、母は安藤和津。サラブレットの家系の娘である。

少しだけ、この血統に違和感があったが、「百円の恋」の安藤サクラの演技を見て、私はびっくり仰天していた。

「うまい!」

の一言なのである。

何より、還暦鬱になっていた私を安藤サクラは思いっきり元気にしていた。

安藤サクラちゃん、マジ、サンクス!

【監督】武 正晴

【出演】安藤サクラ  新井浩文  稲川実代子  早織  坂田聡  根岸李衣

 

11月15日から山口県内先行ロードショー

12月20日から テアトル新宿ほかロードショー