「インストール」綿矢りさ著、河出書房新社発行。一気に読みました。読まされてしまったという方が合っているかもしれません。
高校生活から脱落することを決めた朝子が、クールな12才の小学生に誘われて風俗チャットのアルバイトをするひと月ほどを描いた作品です。さらりと流れる文章は、肌に触れるほどに近く、朝子の周りの籠った空気の温さや湿り具合、匂いまでを感じさせます。さり気ない言葉が積み重なって、人物に、物語に、厚みを増していきます。学校をサボって、部屋の中の物を全部捨てて、秘密を持って。そんなことも、不安とか不健全さとか、ネガティブな印象を全く与えない。朝子の感じる世の中の違和感には瑞々しさや懐かしさを、不器用さと無謀さは新鮮で羨望を感じました。テンポの良い会話と展開は楽しかった。物語は、子どもの頃夏休みが終わる時に感じたような、一抹の寂しさと始まりを予感させながら終結しました。
「インストール」を読み終えて、翌日は「蹴りたい背中」を読みました。そして今日の読み物は「夢を与える」。