私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「湖のほとりで」

2009-08-25 21:42:41 | 映画(ま行)

2007年度作品。イタリア映画。
北イタリア、のどかな小さな村のはずれにある湖のほとりで発見された美しい少女アンナの死体。争った形跡がないことから、顔見知りの犯行であると推測された。この村に越してきたばかりの刑事サンツィオは、いつも明るく元気だったアンナの様子が、ベビーシッターをしていたアンジェロが不慮の事故で亡くなってから変わったという情報を耳にする。アンナは誰に、なぜ殺されたのか――? 捜査を進めていく中で、住民たちの人間関係や家族のあり方が明らかになっていく―。
監督はアンドレア・モライヨーリ。
出演はトニ・セルヴィッロ、アンナ・ボナイウート ら。



湖で女性の遺体が見つかり、その事件の真相を刑事が追う。事件を追うため、彼女の周辺を洗ううちに、怪しそうな人物がいろいろ出てくる。
そういう展開で映画は進んでいく。ジャンル的には、ミステリと言えるかもしれない。

だがつくり手はミステリ部分よりも、ドラマ部分を重要視して描いたのだろうな、ということは伝わってくる。
実際、多くは語らないけれど、ミステリとして見たら、ちょっと弱いかなという気がしなくはないからだ。
だがドラマ部分が優れているかといえば、ちょっとそうとは言いがたい。
趣味の問題かもしれないが、何かが足りないように僕には思えた。


映画は、ミステリのテンプレ通り、被害者の過去を追ううち、被害者の人物像や、追う側の家族の関係などが浮かび上がる仕掛けになっている。
それはそれでいいのだけど、どうも僕は見ていて、ピンとこなかった。
歯切れが悪くなって嫌なのだが、一人の女性の人生や、最後に選択した行動などが、追跡の結果わかっても、へえー、そうなんだ、としか思えないのである。

確かに彼女はかわいそうだけど、見ていて、ああ、哀れだな、ってだけで終わってしまう。
彼女をめぐる人間模様や、刑事の家族のことなども丁寧に描かれているけれど、どうもそれが有機的に絡み合った濃厚な人間ドラマにはなりえているようには見えない。
僕の趣味もあるが、すべて心に響く一歩手前で終わっている。そのため、結構退屈だ。


ただ良かった点としては、ラストが上げられるだろう。
ラストのシーン、刑事は娘を連れて、認知症になった妻に会いに行っている。
そのシーンは必ずしもハッピーエンドとは言えないし、ラストのセリフもそれでいいのかな、という気がしなくはない。けれど、生きていく上でのつらさを、しっかり受け入れるように見えて、なかなか興味深い。

トータル的に見れば、好みとは言いがたいのだけれど、後味自体は悪くない作品である。

評価:★★(満点は★★★★★)

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