
ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力の再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが・・・・・・
新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!
黒丸尚 訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫SF)
結論から言えば、本作の何が良いのか、僕にはまったくもってわからなかった。
名作として名高い作品だけど、僕はダメである。アホだからダメなのである。
まず読んでいても、すんなりと頭に入ってこなかったのがダメだと感じた大きな理由だ。
『攻殻機動隊』や『マトリックス』の元ネタになっているので、似たようなシーンがあるな、と思う部分は多いけれど、それでも物語のシーンをうまく思い描くことができない。
よくわからない造語やスラングが多くて、読んでいても混乱することはしばしばだ。
PC用語がいまほど一般的でない80年代の時点で、これだけの訳ができたというのはすごいことだと思う。
それでも僕にとっては読みづらいこと、この上なかった。
物語の流れも、僕にとっては理解しづらい。
本作の展開は、単語の羅列や短文が多いためか、きわめて疾走感がある。そのため、ちょっとおもしろそうだぞ、と思ったこともないわけではない。
しかしそのスピーディなプロットのために、展開は雑になっているように見えるのだ。
たとえば第一章のラスト、リンダの死の場面なんか、わかりにくくないだろうか。
何度読み返しても、このシーンでは、肝心な描写が(恐らく意図的とは言え)カットされているようにしか、僕には見えない。
そのためただでさえわかりにくいものが、よけいにわかりにくくなっている。
だけどこの作品の世評自体は高いらしい。
僕がどうこう言おうが、多くの人はここに描かれた世界をイメージし、物語のスピードと描写に満足しているということなのだろう。だとしたら、みんなすごいな、と感心してしまう。
僕には千葉の風景も、サイバースペースでの光景も、そこを動く人間の光景も読んでいて手の内に入って来なかった。
それでも、あえて良かった点を上げるなら、いま読んでも斬新さが損なわれていない点だろうか。
『攻殻』や『マトリックス』などが登場したいま読んでも、個性的だと思う面は多い。多分世の多くの人はその個性に惚れこむのだろう、とうなずける部分はある。
僕個人は肌に合わなかったが、本作が際立った作品だということはまちがいないのだろう。
評価:★(満点は★★★★★)
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