2008年度作品。ポーランド=フランス映画。
ポーランドのとある田舎町で、病院の火葬場で働きながら、年老いた祖母と二人で暮らすレオンの楽しみは、近くの看護師寮に住むアンナの部屋を毎晩のぞき見ることだった。なぜ彼はアンナに執着するのか…? 数年前のある日、釣りに出かけるが雨に降られたレオンは、家路を急ぐ途中、小屋で男にレイプされているアンナの姿を目撃してしまう。現場に釣り道具を忘れ逃げ出したレオンは、容疑者として逮捕され服役したのだった…。(アンナと過ごした4日間 - goo 映画より)
監督はイエジー・スコリモフスキ。
出演はアルトゥル・ステランコ、キンガ・プレイス ら。
じりじりとした雰囲気の映画である。
ある孤独な中年男が、アンナという看護師に対してをストーカー行為を働いている、らしい、というところから、映画は始まる。
主人公の理由が明かされないだけに、彼の行動は謎めいていて、冒頭から心を惹きつけられる。
加えて、場面によっては、切断された手首が登場したり、ある犯罪行為が描かれたりと、なかなか不穏な雰囲気さえ感じられる。
このあたりの思わせぶりな描き方は、個人的に好きだ。
そしてストーキング行為はやがて、睡眠薬を相手に飲ませ、相手宅に不法侵入するというようにエスカレートしていく。
おかげで、緊張感も不穏な雰囲気も、また高まってくるのだ。
特に不法侵入した相手の家で、主人公が寝過ごしてしまう場面が個人的には好きだ。
ベッドの下にかくれるシーンなんか、僕はドキドキしながら見ていた。そのピンと張りつめた空気は臨場感に富んでいて、忘れがたい。
また主人公の心情も映画が進むにつれ、じわりじわりと観客に迫ってくるように感じられ、心に残る。
主人公がどういうやつかという細かい説明は、かなり後になってからでないとされないため、自分の想像で補わなければいけない部分はある。
しかしストーカー行為を行なう主人公の行動は愚かしいながらも、どうやら真摯であるということが伝わり、苦みを帯びた切なささえ感じられ、胸に響く。
だが、そんな主人公の行動が許されるものではないことは明らかだ。
だから映画の最後に待っている結末も、当然の帰結と言えるかもしれない。
だが同時に、それは主人公が更なる孤独に陥るという意味も持っているのである。
そういう風に考えると、この映画の結末は、あまりに残酷なのだろう。
その分、映画全体の印象はどんよりしたものとなっている。
でもそこで描かれた、やりきれなさと苦みは、じわじわと心に迫ってくるものがあり、個人的にはかなり好きだ。
作品自体は地味だし、少し暗い内容だと思う。けれど、味わい深い作品と言えよう。
人には勧めないが、これはこれで、なかなかの良品と思う次第だ。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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