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「今から三時間後にあなたたちは全員死にます。ただし生き残る方法もあります、それは生贄を捧げることです」卒業を間近に控えた篠原純一が登校してみると、何故か校庭には底の見えない巨大な“穴”が設置され、教室には登校拒否だった生徒を含むクラスメイト全員が揃っていた。やがて正午になると同時に何者かから不可解なメッセージが告げられる。最初はイタズラだと思っていた篠原たちだが、最初の“犠牲者”が出たことにより、それは紛れもない事実であると知り…。
出版社:アスキーメディアワークス(メディアワークス文庫)
ラストが少しもやっとしたが、基本的には楽しめた。
ありえない設定ではあるのだけど、精緻に駆け引きの際の心理をあぶりだしていて、心惹かれる。
物語自体も予測できず、ぐいぐいと読み進むことができた。
トータルで見れば満足できる作品と言えよう。
卒業間近の高校生たちが学校に閉じ込められる。校庭には謎の巨大な穴ができている。もしもその生贄の穴に誰かが飛びこむか、教室の誰かを投票で生贄に捧げなければ、クラス全員の命が奪われる。
そういう設定の元に描かれた物語だ。
ある種バトルロワイヤル的で、ゲーム的な内容と言えるだろう。
そのゲームっぽさゆえか、予測も不可能で読んでいる間は食い入るように読み進むられる。
しかしこの手の物語がそうであるように、そのような設定の状況が起きた理由は説明されない。
だから最後は、で、結局何がしたかったの? っと思ってしまい、もやっとする。
のみならず、最後では、重要人物のその後が描かれなかったので、消化不良な気分になったのは否定しない。
だけどゲームに身を投じる人々の心理などは大変面白かった。
自分が死なないために、どのように動くべきか。
生贄にささげられないよう、牽制をし合ったりと、お互いに心理的なつばぜり合いが繰り広げられておりおもしろい。
互いに裏切り合うなどの状況は読んでいても飽きさせない。
ある意味教室という単位で自分の立ち位置が明確になっていく様は、少しこわくもある。
これも人間社会の縮図と言えるのかもしれない。
それでいて、セカンドステージのゲームのように、コミュニケーションを取る関係をゲームとして可視化するなどの工夫もされていて、ユニークだ。
ラストに不満はあるものの、おおむねは飽きることなく全三巻を読み進めることができた。
リーダビリティにあふれ、プロットもすばらしく、心理描写も達者な作品である。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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