私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

上橋菜穂子『闇の守り人』

2014-06-21 20:28:33 | 小説(児童文学)

女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく彼女を出迎えたのは――。バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせる。壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるシリーズ第2弾。
出版社:新潮社(新潮文庫)




単純におもしろい作品であった。

『闇の守り人』は大人から支持されていると著者も書いているけれど、実際読んでいても、こちらの方が、前作の『精霊の守り人』よりも楽しんで読むことができた。
すなおにすばらしい作品と思う次第である。


内容をまとめるならば、バルサが過去と向き合う話といったところだろう。
その過程で、政治的な謀略などがからんでくる。その展開がなかなか飽きさせない。
前作同様、戦闘シーンもあって、読んでいるだけでドキドキすることができる。
エンタテイメントとしても、実にすぐれた作品だ。


だが本作の良い点は、そんなエンタメ要素以上に、バルサが過去と向き合う過程にある。

バルサにとって、ユグロとの関係は非常に大きかったことは疑いえない。
自分を守り、戦う術を教えてくれたユグロ。そしてユグロもバルサに愛情をもって接してくれた。
だがそんなユグロにも、自分をこんな境遇に追いやったバルサに対する憎しみがなかったわけではないのだ。
その様が読んでいて悲しい。

しかしそれもまた仕方ないことだろう、と思う。
彼だって友人を殺したくはなかっただろうし、その怒りがバルサに向いたとしても責めることはできない。
だが同時に最期の時に、もう一度人生をやり直しても、同じようにする、といったユグロの言葉に偽りはないのだろう、ともまた思うのだ。

だからこそ、それを受け入れ癒すのは、バルサしかいなかったのだろう、と思う。


その物語の流れが、深く心に響き、ただただ感動した。
ともあれ見事な一冊である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)



そのほかの上橋菜穂子作品感想
 『精霊の守り人』

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