私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー』

2014-07-19 19:54:47 | 小説(児童文学)

みんなは“内側”の人間だけれど、自分は“外側”の人間だから―心を閉ざすアンナ。親代わりのプレストン夫妻のはからいで、自然豊かなノーフォークでひと夏を過ごすことになり、不思議な少女マーニーに出会う。初めての親友を得たアンナだったが、マーニーは突然姿を消してしまい…。やがて、一冊の古いノートが、過去と未来を結び奇跡を呼び起こす。イギリス児童文学の名作。
高見浩 訳
出版社:新潮社(新潮文庫)




ファンタジーである。
だから細かくつっこんでも仕方ないのだが、ことの真相には納得いかない部分もあった。
しかしそれ以外の部分は、少女の心情が丁寧に描かれていて、好印象の作品である。



この物語の読ませどころを、どこと捉えるかは人によって違うだろう。
けれど、マーニーが誰かという点は一つの肝であると思う。

理屈っぽい人間なので、この最後の真相にはいくらか納得がいかなかった。
細かくは言わないけれど、アンナが出会ったマーニーは結局何だったのだろう(誰ではなく)、という点がどうしても引っかかるのである。
理性的に読みがちな僕としては、物語のラストにもどかしさを覚えたことは否定しない。


しかしそれ以外の部分は結構楽しめた。
特にアンナの描写に心惹かれる。

彼女は言うなれば、孤児なわけで、そのせいでその心は孤児根性に染まっている。
人の輪に入れない孤独感を抱いているし、他人の愛を必ずしも素直に受け入れることができない。
子供だからというのもあるが、基本的にアンナは不器用な子だ。


そんな彼女はマーニーに出会い、彼女に心を開いていく。
特に自分の過去を告白するところがすてきだ。後からふり返ると、かなり重要な場面なのだが、そのとき二人は真に友達になれたのだと思う。

そしてマーニーに対して怒っていたけれど、最後に許した場面も心に残る。
このマーニーを許したっていうことこそ、彼女のトラウマを克服するトリガーになっているのかもしれないと思えるのだ。



言うなれば、この作品は癒しの物語なのだと感じる。
そして孤児根性の沁みついた少女が、心を開いていく話だというわけだ。
その過程が心地よい作品である。

納得いかない部分もあるが、少なくとも途中までは心奪われたし、物語全体を覆う雰囲気もすてきだった。
良質の児童文学である。

評価:★★★(満点は★★★★★)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウィリアム・シェイクスピア... | トップ | ライマン・フランク・ボーム... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説(児童文学)」カテゴリの最新記事