私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『穴 HOLES』 ルイス・サッカー

2008-03-10 20:15:49 | 小説(児童文学)

無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放り込まれたスタンリー。かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。ある日とうとう決死の脱出。友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」を目ざして、穴の向こうへ踏み出した。
アメリカの作家ルイス・サッカーの全米図書賞を受賞したベストセラー作品。
幸田敦子 訳
出版社:講談社(講談社文庫)


ふしぎな味わいの小説だ。
矯正キャンプに送り込まれた少年が穴を掘るというストーリーだが、そこに主人公の先祖の話など、おもしろいエピソードがいろいろと挿入されている。
玉ねぎ売りのサムとキャサリンの話や、ひいひいじいさんとマダム・ゼローニの話などは実にユニークで楽しい。
個人的にはマジックリアリズムっぽいなと思ったが、どうだろう。もっともマジックリアリズムの定義自体がよくわかっていないけれど。

物語が構成が巧妙な点もこの作品の特徴だ。いくつかのユニークなエピソードが先できっちり合わさっていく姿は読み応えがある。
多分これは伏線なんだろうな、と思いながら読んだが、それでもそれがどう噛み合うかを想像するだけでも充分におもしろかった。

またキャラ造形が良かったのもこの作品の美点だろう。
特に主人公スタンリーとゼロの友情が個人的には良かった。ゼロに最初文字を教えることをためらいながらも、それを教える過程や、ゼロを追って、ビッグ・サムを目指すところなどはスタンリーの成長譚の様相を呈していて心地よい。
またスタンリーやゼロ以外のキャラもそれぞれ立っていたのが楽しめる要因になった、と思う。

残念ながらそこまで大絶賛される作品とまでは思わなかったけれど、娯楽としては申し分ない作品だ。個人的には充分ありである。

評価:★★★(満点は★★★★★)

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