2005年度作品。アメリカ映画。
1950年代アメリカに吹き荒れた赤狩りに立ち向かったニュースキャスター、エド・マローと、共に闘った男たちの姿を描く。
監督は俳優としても本作に出演するジョージ・クルーニー。監督2作目。
出演は「L.A.コンフィデンシャル」のデヴィッド・ストラザーン、本作でヴェネチア国際映画祭主演男優賞を受賞。ロバート・ダウニー・Jr. ら。
俗に言う赤狩りというものを僕は知らないのだけど、この映画を見ていて、これは50年も前の古い話ではないのだな、と強く感じた。恐怖を利用して、国民を支配する。これってまんま9/11以降のアメリカと一緒だからだ。
人間ってやつは、時間が経ったからと言って賢くなれるものでもないのだな、とちょっとだけ暗澹とした気分になってしまう。
主人公のマローの姿は極めてかっこいい。そんな暗澹とした愚かな時代だからこそ、自分の良心で権力に立ち向かっていく姿勢は、毅然、そのものだ。「グッドナイト&グッドラック」の決めゼリフと言い、この人は存在そのものがダンディズムで、ハードボイルドといったところであろう。
この映画は一方的に権力側が悪だ、と訴えているわけではないところも個人的には好印象だ。良心に従いながらも、それが正しいのだろうか、と迷うこともあるし、偽証罪という点を説明しないところも、マスコミの恣意性を感じさせる。
それでも、ジャーナリズムというものは、迷いながらも、自分の信じる正しいであろう事に対して、真摯に立ち向かっていくことしかできない。そんな宣言めいたものを感じて、僕は感銘を受けた。
だがはっきり言って、この映画は一般には受けないだろう。ラストのセリフじゃないけれど、娯楽とは言いがたいし、地味だし、世間的に受ける要素が少ない。映画としても、記者の自殺などエピソード的に意味がわかりにくい部分もあり、キズはある。
でも、硬派な良作だと僕は思う。これはこれで一度見ても、損はない作品ではないだろうか。
P.S.
映画そのものとは関係ないが、モノクロの画面のために、白い字幕が極めて見づらかった。せめて配給側も、色をグレーにするなどの工夫をしてほしかったと思う。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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