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イタリアの大貴族デル・ドンゴ家の次男ファブリスは”幸福の追求”に生命を賭ける情熱的な青年である。ナポレオンを崇敬してウァルテルローの戦場に駆けつけ、恋のために殺人を犯して投獄され、獄中で牢獄の長官の娘クレリア・コンチと激しい恋におちる……。小公国の専制君主制度とその裏に展開される政治的陰謀を克明に描き、痛烈な諷刺的批判を加えるリアリズム文学の傑作である。
大岡昇平 訳
出版社:新潮社(新潮文庫)
「パルムの僧院」は以前読んで挫折した作品だ。
それもひとえにファブリスの行動についていけなかったのと、ジーナとモスカ伯爵が繰り広げる政治劇がピンとこなかったからだろう。
今回再読してみたが、前回感じた不満は幾分払拭された気がする。
だが全体的にピンとこないことに変わりなかった。
『赤と黒』のときも感じたが、僕とスタンダールはどうも肌が合わない気がする。
しかし19世紀の小説らしい主人公の造形は何かと心に残った。
主人公のファブリスはよく言えば情熱的な人物だ。
基本的に直情的なところがあり、最初の方などはずいぶん世間知らずだ。
ナポレオンを追いかけてワーテルローまで向かうところもそうだし、いいように金をだまし取られるところを見ても、その思いを強くする。
ともかく見るからに危い。
実際その後、ナポレオンの軍に向かったことが原因で捕まるし、その後は女がらみで殺しを行ない、やはり捕まることとなる。
しかしそんな危うさと情熱を併せ持つゆえに何となく女受けはいいような気がする。
ワーテルローだったら、酒保の女は親切にしてくれたし、その後もいろんな女が彼にかまってくれる。
だが一番彼を愛したのは、まちがいなく叔母のジーナだろう。
彼女はファブリスが捕まったとき、モスカ伯爵などを使い、必死に政治活動を行ない、釈放までこぎつけている(政治的な駆け引きはなかなかおもしろい)。
しかしそうやってファブリスのために行動するジーナだが、ファブリスの心は徐々にクレリア・コンチへと傾いていく。
こういったところは、ファブリスらしいと言えばらしい。
そしてそんなファブリスが、僕にはどうにも合わないのである。
嫌いではないし、理解できないわけではない。
ただ心には響かないのだ。
物語としては起伏があっておもしろいのだが、おかげで一歩引いたところから見てしまったきらいはある。
だがその19世紀らしい主人公の行動は、共感したしないにかかわらず、忘れがたいものがあった。
好き嫌いはあるが、個性ある作品と言えよう。
評価:★★(満点は★★★★★)
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