Luna's " Tomorrow is a beautiful day "

こころは魔もの。暗い地下でとどろくマグマのような…。

3.11の災厄を銘記する~「日本沈没」より

2011年03月13日 | Weblog

 

 

 

 

われわれの直面する未来には、過去の歴史の延長からある程度類推できる部分もかなりある。

 しかし、未来の歴史の中には、単なる過去の歴史の延長によっては、

 決して類推できない未知の、暗黒の部分もあるのだ。

 過去において、そんなことが一度も起らなかったからといって、

 それが未来にも決して起こらないとは、誰が言いえよう!

 

 

 

 まして、わずか数万年の現生人類の中で、

 われわれがどれほどの”過去”を体験してきたというのか?

 わずか2世紀足らずの近代科学の探求の中で、

 われわれがどれほど〝人類以前の過去〟の歴史について知りえたか?

 

 

 

地球史を区切るといわれるいくつもの大造山運動についても、

 われわれ哺乳類の時代の新生代中新世

 ~つい2500万年前に起こったグリーンタフ造山運動についてすら、

 われわれは、その地下に残る痕跡から、その変動の激しさをおぼろげに描き出すことができるのみであり、

 その最もはげしい時期に、どんなことが起こったか、直接体験したわけではない。

 〝過去の地殻大変動〟といっても、われわれは変動の死骸を見るのみで、

 それが生きて、雄たけびをあげ、この地上を荒れ狂っていた様子を知っているわけではないのだ。

 

 

 

現代の災厄においてすらそうではないか?

 地震による大被害、台風洪水による被害についても、

 それが起こってしまってから、はじめてわれわれは災厄のすさまじさを知らされる。

 

このとおりなのだ、諸君。

 

 

 

 

 

「日本沈没」/ 小松左京・作