Luna's " Tomorrow is a beautiful day "

こころは魔もの。暗い地下でとどろくマグマのような…。

「一緒に」「共に」は会話のスピリット

2006年08月27日 | Weblog
コミュニケーションって、どこのカルチャーでも大切だと思うんです。親子でも恋人同士でも夫婦でも。結婚してわたしたち、ふたりとも仕事を持っていますので、会う時間が減ってくると、小さなことでもケンカになっちゃったりするんです。そんなとき、考えてみると、最近話し合っていないなと思うんです。だから、たとえば寝る前に十五分でいいから、ちゃんとお互いに目と目を見合わせて話をするようにしています。ただ一緒の空間にいるだけではダメなんです。

早見優 (元アイドル歌手、現女優、タレント)
 
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結婚して間もない頃には、「行ってらっしゃい」「行ってきます」という決まり切ったあいさつ言葉にも、実感がこもっており、会話もはずんで楽しい。やがて時とともに、あいさつ言葉も習慣化し自動化して、実感に乏しくなる。共働きで、疲れもあってか、会話に対しても、いつしか無精が生じる。人間関係の維持、改善が必要なのは、この時期なのである。

結婚して3年目のM君の話である。このところ、残業も少なくなって、会社からの帰りが早くなった。その分、帰宅して時間を有効に使っているかといえば、むしろムダに過ごしているように感じられる。その原因はTVの見すぎで、見たくもない番組まで見て、無為に過ごしていることに気づいた。そこでM君は『週間TVガイド』という雑誌を買ってきて、見たい番組をピックアップすることにした。そうすれば時間も空くから、妻と会話をする時間に当てることもできる。このところ、妻との会話がめっきり減って、関係がギクシャクし始めているのが気になっていた時期でもあった。

というわけで、M君は買ってきたTVガイドを開いて、見たい番組のところに、蛍光ペンでマークをつけていた。そこへ、奥さんがやってきて、
「あなた、そうやって、自分の見たい番組だけ印をつけて、わたしのことはどうでもいいわけ?」と皮肉っぽい言いかたをした。なんだか急に腹が立ってきて、彼は言い返した。
「じゃ、オレは自分の見たい番組に印をつけるのに、いちいちおまえの許可がいるわけ?」
「そんなこと言ってないわ。わたしにひと言相談してくれたっていいでしょ、って言ってんのよ」
「それならそう言えばいいじゃないか。もっと素直な言いかたができないのか、おまえは」
「悪かったわね」

実は、このふたりの間では、このところ、ちょっとしたことで、口げんかをすることが増えていた。会話不足を解消する目論見もあって行ったM君の試みが失敗に終わったのも、会話の不足のせいである。夫婦ゲンカは、外から見れば他愛ないが、本人たちにとって、梅雨の天気以上にうっとうしく、気の滅入るものだ。そんな事態を招かないためにも、M君はひと言、
「TVガイドを買ってきたんで、見たい番組に印をつけようと思うんだけど、一緒にやらないか?」と呼びかければよかったのだ。「一緒に」「共に」は、会話の精神である。呼びかけに相手が乗ってこないとなると、相手にかなりのシコリがあると見たほうがいい。時間をかけて、率直に話し合うべきだろう。

(「人は『話し方』で9割変わる」/ 福田健・著)