(2007年9月28日朝刊)
大相撲で前代未聞の事件が起きた。時津風部屋の序ノ口力士、時太山=当時(17)、本名斉藤俊さん=が稽古後に死亡した問題で、愛知県警は斉藤さんが制裁目的の暴行を受けたとして捜査を進めている。
斉藤さんが部屋を抜け出したことに怒った時津風親方が暴行を指示し、兄弟子らが殴る蹴るなどをした疑いがもたれている。
事件の内容を見ると、明らかに稽古に名を借りた理不尽な暴力だと言っても過言ではない。
県警の調べでは、時津風親方はビール瓶で額を殴った上、「かわいがってやれ」などと指示、兄弟子らに暴行させていた。兄弟子らは斉藤さんを狙った執拗なぶつかり稽古を繰り返し、その際、兄弟子の一人が金属バットで殴ったとされる。
相撲を含め、どのスポーツも勝負の世界である限り、強くなるための厳しい訓練は不可欠だ。大相撲では「かわいがり」という特訓があり、兄弟子が土俵上で押し倒したり、砂まみれにして弟子を鍛えている。
強くなるための過程であれば、納得できるが、怒りにまかせた特訓であるなら、制裁にほかならない。
稽古がしごきにならないように弟子に目を光らせるのが親方の役割であるにもかかわらず、暴行を助長したのであれば言語道断だ。
相撲協会の責任も厳しく問われるべきである。朝青龍騒動でも対応のまずさが問題視されたが、今回は人の生き死にの問題であり、毅然とした対応を取るのは当然だ。残念ながら今のところ、そのような姿勢は見られない。
相撲協会は曲がり角にある。国技の伝統を守る協会は力士出身者で運営されているが、逆に言えば、相撲しか知らない。このため、時代の変化に適切に対応できていないのではないか。
情報を開示し、外部の意見を取り入れるべきだという声も根強い。
暴行事件を相撲界全体を揺るがす重大事として受け止め対処しなければ、相撲は国民から見放されてしまう。
沖縄タイムス
大相撲で前代未聞の事件が起きた。時津風部屋の序ノ口力士、時太山=当時(17)、本名斉藤俊さん=が稽古後に死亡した問題で、愛知県警は斉藤さんが制裁目的の暴行を受けたとして捜査を進めている。
斉藤さんが部屋を抜け出したことに怒った時津風親方が暴行を指示し、兄弟子らが殴る蹴るなどをした疑いがもたれている。
事件の内容を見ると、明らかに稽古に名を借りた理不尽な暴力だと言っても過言ではない。
県警の調べでは、時津風親方はビール瓶で額を殴った上、「かわいがってやれ」などと指示、兄弟子らに暴行させていた。兄弟子らは斉藤さんを狙った執拗なぶつかり稽古を繰り返し、その際、兄弟子の一人が金属バットで殴ったとされる。
相撲を含め、どのスポーツも勝負の世界である限り、強くなるための厳しい訓練は不可欠だ。大相撲では「かわいがり」という特訓があり、兄弟子が土俵上で押し倒したり、砂まみれにして弟子を鍛えている。
強くなるための過程であれば、納得できるが、怒りにまかせた特訓であるなら、制裁にほかならない。
稽古がしごきにならないように弟子に目を光らせるのが親方の役割であるにもかかわらず、暴行を助長したのであれば言語道断だ。
相撲協会の責任も厳しく問われるべきである。朝青龍騒動でも対応のまずさが問題視されたが、今回は人の生き死にの問題であり、毅然とした対応を取るのは当然だ。残念ながら今のところ、そのような姿勢は見られない。
相撲協会は曲がり角にある。国技の伝統を守る協会は力士出身者で運営されているが、逆に言えば、相撲しか知らない。このため、時代の変化に適切に対応できていないのではないか。
情報を開示し、外部の意見を取り入れるべきだという声も根強い。
暴行事件を相撲界全体を揺るがす重大事として受け止め対処しなければ、相撲は国民から見放されてしまう。
沖縄タイムス
暴力とは何か。それは相手を辱め、貶めて屈服させる行為だ。人格を蹂躙する行為だ。
だが、ニッポン男児の精神を鍛える方法だ、という名で、それが多めに見られる風潮がわたしには許せないし、そういう風潮がひどく愚鈍に見える。
コーチングのスキルが明らかにしたように、精神力を鍛えるのは本人に自信を確立させることだ。それは本人の人格を尊重し、長所を長所として評価し、受入れることだ。そのためには励ましと勇気付けと、信頼をはっきり表明することである。ほめることに出し惜しみをしないことだ。決して貶めることではない。
ニッポンの「伝統」がしごきを美化する風潮が、いまだに体罰を美化する風潮の土台となっている。暴力は訓練ではない。人格と自尊心の破壊である。