2007年8月4日
地価上昇の勢いが止まらない。国土交通省の公示地価に続き、国税庁の路線価でも大幅にアップした。三大都市圏の上昇が主因だが、地方の低迷は深刻だ。バブル再燃と格差拡大に警戒が必要だ。
国税庁が発表した二〇〇七年分(一月一日現在)の全国の標準宅地の平均路線価は前年比8・6%増となった。前年の伸び率が0・9%だから上昇に弾みがついた。東京圏13・1%、名古屋圏9・1%、大阪圏8・1%と三大都市圏が高い伸びとなった。
とくに東京の銀座や名古屋市の名駅、大阪市の御堂筋など一等地では33-40%もの上昇となり、一部ではバブル期並みの水準になった。札幌、仙台、福岡など20%を超える上昇率となった地方中核都市は、前年の二都市から九都市に増えた。
その一方、都道府県別にみると下落幅が縮小したところが目立つものの、長野、岐阜、三重、福井など三十一県で地価は下落した。また地方都市でも、鳥取市は依然として10%以上も落ち込んでいる。大都市圏・中核都市と、地方都市との格差は歴然としているのが実情だ。
地価は景気指標の一つであり、そこから地方経済をみると低迷状態を抜け出していない。格差が是正されない不満が今回の参院選に反映されたと言えないこともない。国・自治体などによる地域振興が急務だ。
三大都市圏などの地価上昇の理由ははっきりしている。景気回復や都心回帰などでオフィス、マンションなどの需要が拡大した。将来の投資収益が期待できるとして、不動産投資信託や外資系投資ファンドなどが積極的に不動産を取得した。それが地方中核都市にも波及した。
心配なのは「土地は持っているだけで値上がりが期待できる有利な資産」という、かつての土地神話の復活だ。投機が投機を呼んだ土地バブルの再燃も気がかりだ。国交省や不動産関係者は「その心配はない」と否定するが地価は一度火がつくと燃え上がる。慎重な監視が重要だ。
路線価は相続税や贈与税の算定基準だが、その上昇は地代や賃料、サービス料などに跳ね返る。さらに三年に一度の固定資産税の評価替えも〇九年度に迫っており、これも負担増の可能性がある。地価上昇は庶民の暮らしにじわりと影響を与える。
国交省は来年一月から三大都市や政令指定都市などを対象に、住宅地と商業地約百カ所を選んで本格的な地価分析調査を行う計画だ。比較的高い価格の地点を選んで鑑定し公表するという。しっかりと調べてタイミング良く公表してもらいたい。
東京新聞
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