心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

現代と科学とconflict of interest

2007-01-22 13:30:42 | 効果・実証・エビデンス関連
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あるあるあるあr……ねーよwww大事典,すごいことになってますな。そこらへんで思うところを少し。

結論からいうと,現代社会において,科学は儲かります。などと言うと,「お? 見ろや,機を見て,いっちょまえに科学批判だぜ?」なんて言われちゃうかもしれないけど,ただ,事実として科学は儲かります。ネット上では,信者=儲,と書かれてたりしますが,これはじめて見た時はうまいなあと思ったけどね,まあ我ら皆,多かれ少なかれ,科学信者ですよ。別に信者が悪いとは言いませんよ。でも宗教的な神を信じることと本質的な違いはないってことです。

科学は儲かる。これ,EBMなんかだと,よく出てくるのが,conflict of interestって語だけど,「利害の抵触」なんて訳されたりするけど,簡単に言うと,製薬会社は薬の臨床試験が自社の利益と大きく関わっているので,臨床試験の論文には,製薬会社の関与があるかないかを明記しましょうってことになっとるわけです。これ,逆にいえば,科学的な論文が強固な客観性を有しているというのは,幻想であるということですね。つうかむしろ,今までそうやってきた反省を活かす,ということだと思います。

ま,科学的な実験というものを少しでもやったことある人にとっては,捏造なんざ造作もない,というといいすぎかも知れませんけど,漠然と実験をやっても,都合よく色よい結果など,出はしない。したらば,若干の手心を加えるのは,ありやなしや? まあ,なしなんだけどね,原理的には。倫理的にも。

さらに,conflict of interest,製薬会社だけの問題ではないのは,賢明な読者諸氏はご存知でしょうが,名声だって,虚栄心だって,家族愛だって,conflict of interestする可能性があるわけで,科学者だって人間です。崇高な科学的使命と明日の糊口の資,さあどっち?

まあ,ちょっと「あるあr」に戻りますと,ある種の破滅願望にも似た爽快な捏造のバレッぷりでして,減量苦に耐え切れず,夜な夜な屋台でうどんを食していたマンモス西にも似ているような気がしないでもない。それまでが辛ければ辛いほど,禁断の果実は甘いわけで,それはさておいても,われわれの盲目的な科学「まがい」への信仰に対する強烈なアンチテーゼに図らずもなっていなくもない気がしないでもないわけですな。

つっても,こういう類の情報を信じる・信じないについて,(栄養学等の専門家以外の)むしろ「信じない側」の人に話を聞いてみたい気もするんですよね。データが捏造でない場合でも,信じない人はいると思うんですよね。だからといって,そういう人たちの皆が皆が実証的な観点をもってるわけではなく,他の代替的ドグマ(自身の経験則や聞きかじり等)によって,「どうせこんなの嘘だっぺ」とシャットダウンしちゃうわけで,それは「科学的データは嘘をつかない!」と思う人と,質的にどう違うのかな,と思う。

そうすると,もっとも正しい態度は何か,というと,「保留する」しかないんですな。もちろん理想的には「仮説をいつでも棄却するという態度を保ちつつ信じる(あるいは信じない)」なんだろうけど,そんな奴,日本に何人いるんだろう? って感じで,われわれ庶民としては,保留する,判断中止ッ,カッコに入れろ,フッサールですよ。それしかできね。

それでもって,10年経ったら,判断できるかもしれない(その前に忘れるだろうけど)。「ああ,10年前には納豆ダイエットなんてバカげたものが流行ったなあ,あれ,とんでもないデタラメだったんだよなあ」と。で,ふとテレヴィを見やると,「甘納豆ダイエットの効果」について,喧伝している。「ああ,これもきっと嘘だろうな」。あれ?

なんて,自分だけ高みから下界を見下ろすような感じで,恐縮ですが,psy-pubだって,√3=1.732……,すなわち人並みに騙されるわけでして,ミカンダイエットだってやりましたよ。あれのデータが捏造かどうかは知らないけれど,効果はなかった。私個人においては。ただ,科学とは基本的には一般法則定立を基本命題にしているわけだから,ま,文句は言いますまい。私には合わなかったけれど。

個人的にはデータが一人歩きする(基本的に放っておくと一人歩きする)場合,もうそれはドグマ化してるわけですが,そうなると,もう何であれ,利益あれども弊害は出てくるわけで,これは科学が悪いんじゃない,それを扱う人が悪いんだ,なんていってみても,数字は文字よりも強し,夜明けの来ない夜はないさ,例外のない科学はないさ,なんて,おためごかしも屁のツッパリにもならんわけですよ。

人間がやる行為において,あらゆる意味で,恣意性から逃れることは出来ないというのは,ひとつ知っておくべきだと思うと同時に,その恣意性こそが,さまざまな進展を生んできてるのも実は本当だと思う。「納豆=ダイエット効果あり」は,残念ながら,その杜撰な恣意性でもって,批判の嵐なわけですけど,恣意性からまったく自由になることは実際的に不可能であるという認識を持たないかのような,ある種の投影同一化的で分裂排除的なメディアの叩きっぷりには,まったく恐れ入ります。罪悪感から叩きたくなるのはワカランでもないけど,敢えて言えばカスである。科学者も同じ。喪黒福造にそそのかされたら,捏造しちゃうぜ,きっと。


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データを読むことは重要です。しかしデータを読むことはデータを憶えることとは違います。どう使うか,っていうのは現段階においては,非常な難問だと思います。また,科学者としての態度が最も問われるのは,実は,研究レベルではなく,実践レベルだと思います。


それで,以上の話とはあんまり関係ないけれど,半ばヤケクソ的に,


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こういう身の丈にあった科学っていうのは良いですね。ペプチド結合だの分子レベルの話なんてさっぱり分からんけど,これ,良いなあと思うのは,知識を鵜呑みにするだけじゃなく,(自身および現物の)つぶさな観察というのが,素朴だが重要な科学的態度を育みうることだよなあと思うんですよね。「通になるなら便通がいい」なんてバカらしくてステキ。Amazonのコメント欄も無駄に熱いね。イイヨイイヨー。


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