心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

故手塚治虫氏はシソフレニーとルビをうってました(きりひと讃歌より)

2006-05-26 17:23:12 | 精神医学・精神病理学
唐突ですが,統合失調症の疾患教育に用いられている,バーチャルハルシネーション(VH)って御存知と思いますが,『精神医学』誌48巻5号の,原田誠一×丹野義彦先生の論文は興味深かったです。2004年に発表されてから,少なくともWeb上ではあまりそれに関する記述がないようですが,そこは,名著『正体不明の声―幻覚妄想体験の治療ガイド』の原田先生ですから,今後の展開が期待されます。しかし,パンフレット『日本版バーチャルハルシネーションについて』ってどこで手に入るんだろうか?

などと,ぼんやり考えてたら,VHとは関係ないのですが,こういう本が出てたことを知り,やや興奮した次第。



統合失調症の前駆期治療統合失調症の前駆期治療
Alison Yung, Lisa Phillips, Patrick D McGorry 宮岡 等 斎藤 正範

中外医学社 2006-04
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メルボルンの研究チームによる取り組み。なんかタイトルから受ける第一印象は,バリバリの生物学的な精神医学書なのかなと思いきや,いい意味で期待がはずれます。病因論から医療論まで,非常に包括的なその取り組みが示されます。あえてポイントを絞ったとすれば,「前駆期」というところだけであって,しかし,統合失調症へのアプローチ全般への示唆に富むと思います。いやなかなかこういう本ってないですよね。値段も医学書にしては安いし,要注目ですな。



初期分裂病初期分裂病
中安 信夫

星和書店 1990-01
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さて,「初期」,「統合失調症」といえば,当然,中安先生ですよね。現在は「初期統合失調症」という言葉を使っているようです。え? 統合失調症の初期とは違うのかだって? いやあ,それは申し訳ないけど,psy-pubには分からんです(ゴメンナサイ)。言い訳じゃないけど,何度読んでも分からないのです。だからたぶんこれはMetaphysicな理論として読んではダメなんだということかと理解してますけどね。



初期分裂病―分裂病の顕在発症予防をめざして初期分裂病―分裂病の顕在発症予防をめざして
中安 信夫 村上 靖彦

岩崎学術出版社 2004-12
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続編として,これもあります。同著者の同タイトルの本が別の出版社から出てるなんて……。まあシリーズものだからいいのかな。最後に村上靖彦先生との座談会という名の,対談がありますが,素人的には,村上先生の言ってることのほうが感情移入しやすいかな。……そこが素人の限界。



分裂病症候学 増補改訂分裂病症候学 増補改訂
中安 信夫

星和書店 2002-05
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……と,思ってる人は,これを読むとよろしいと思います。いやこれも難解には違いないんですが,中安先生の,統合失調症への姿勢,非常につぶさで緻密な観察,が感じられ,なるほど,こういう中から生まれてきた「臨床論」としての「初期統合失調症」なんだなと,そりゃあ素人が一朝一夕に了解できるものじゃないんだと,そう思います。



精神科臨床のための必読100文献精神科臨床のための必読100文献
中安 信夫

星和書店 2003-06
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ちなみに,以前のエントリ「ラブ・アンド・ドリームふたたび,またはメタ・ブックレヴューPART2」(←まったく内容を反映してないエントリのタイトルが恥ずかしすぎる……)にて紹介したこれ,上記書籍を鑑みると,そのスタンスに深く頷いてしまいます。
この書籍は,臨床心理学・精神医学領域のすべての人におすすめしたい,良書でありますよ。


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