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【人生をまとめるもよし】専門出版社に持ち込むための企画書の書き方③【転職の武器とするもよし】

2005-12-16 18:33:20 | 企画書を書こうという企画
3:企画書の書き方

専門書出版の場合,おおまかに分けて,4つのカテゴリーがあります。

1 書き下ろしの著作。
2 博士論文,もしくは論文集のような,すでに出来ているものを,多少リライトしつつ一書にまとめたもの。
3 海外の文献の翻訳。
4 編集もの(著作でなく,「○○編」とつくもの)。

です。

どれも多少企画書の書き方が異なるのですが,大きく違っているのは,3とそれ以外です。

さて,まずは何から書けばよいかというと,


1)挨拶
まずはここからはじめます。あったりまえですが,謹啓や拝啓から始まり,敬具で終わる手紙が必要です。
編集者というのはかなりいい加減な人間が多いので,メモは乱雑,社内文書は誤字だらけという場合もなくはなく,たとえば電子メールなどでは,「謹啓」と「敬具」or「前略」と「草々」といった文言があることをまったく気にしないのですが,やはり,意地の悪い職種なので,こういう手紙に関しては,挨拶文を重視するものです。
手紙の書き方などの情報はHPにあふれていますので,省略。
とはいえ,「非常識」でさえなければ,十分でしょう。

2)自己紹介
次に来るのはこれ。相手方の出版社によって内容は変わります。専門書出版社ならば,たとえば「臨床心理士」だけ済むでしょうが,多少方面の違う出版社でしたら,「カウンセラー」とか「心理相談員」と書く方が無難な場合もあるかもしれません。また,専門書出版社でしたら,「××大学教授」と書けば何となくわかるものもありますでしょうが,他の出版社でしたら,もう少し詳しく,「マクロ経済学を専攻しています」といった付随情報も必要かもしれません。
そうした「免許」「所属」以外にも,「どういう人間か」をわかりやすく,説明する必要があります。
これは「あなたのウリは?」という質問に対する答えと考えてください。
たとえば,「所属」を前面に出すのか。あるいは,「職種」を前面に出すのか。もしくは,師事していた教授・助教授を前面に出すのか。場合によっては,「出身大学」を前面に出すこともあるでしょう。
このウリは,本の企画内容とも関係がしてきます。本の企画内容に価するかどうかが問われています。
もっと言ってしまえば,「あなたが書く本を,あなたの名前で出すべきなのか」ということです。たとえば,「ヤンキー先生母校へ帰る」なんていう本がありますが,その著者が「開成高校卒」だったら話にならんのですね。「専門書」の場合,本の企画と著者との文脈――というのがものすごく重要です。
また,手紙のなかでは簡単に自己紹介を終えて,「履歴書」を添付するという手もあります。経験の豊富さをアピールしたいときには,これがグッドです。

3)企画内容の紹介
さて,次は「作りたい本=企画」の紹介です。要素はこんな感じでしょう。

・内容をまずは簡単に。
・学問的,理論的,歴史的意味合い。
・想定する読者層(専門家向けか,初心者向けか,一般向けかetc)。
・具体的なイメージがあれば(たとえば,「○○」の日本版です,といった)。
・本の背景にあるもの(業界のニーズなど)。
 などを書きます。
 門外漢である編集者に汲み取りやすく書くことがポイントです。

4)特典を書く
「特典」とは,執筆者が用意できる「出版社に対する利益」です。出版社はどんなに売れない本ばかり作っているところでも,当たり前ですが,営利企業です。出版社の利益の出し方には実はさまざまあるのですが,どんな会社であっても,「特典」があることを喜ばないわけはありません。
もし可能ならば,絶対に記しておきたいところです。
執筆者が用意できる「利益」とは,たとえば,

・教科書採用は可能か。
・個人でどのくらい売ることができるか(講演会や勉強会などがある等)。
・買取を希望する等。

といったことです。
しかし,気をつけたいのは,たとえば,「自費出版でもかまいません」と書くことです。そう手紙にあれば,自費出版にしてしまうのが,出版社の腹黒いところです。注意。他にも「印税は要らない」と書いてしまえば,どんなに売れても「印税」はくれません。
どちらにせよ,この特典については,手紙のうえでは,見通しのない具体的な数字に関しては何も言わないに限ります。来年度の教科書の採用数などはわかるわけはないですから。
「刊行された暁には教科書採用をするつもりです。/今年度,私の授業は三百人弱が受講しています」
と書くくらいにとどめておくのが無難かもしれません。

5)人脈について
えらい先生を師匠に持つ人に朗報です。もし,その先生に「推薦」をいただけるのならば,「私の師匠は△山□夫です。/△山先生に御社を紹介していただきました。/推薦の辞をいただくことも可能です」といった情報を組み込むのは吉となることもあります。
えらくない先生を師匠に持つ人,もしくは係累ナシの人に朗報です。その「△山先生」が出版社にとってマイナスのイメージを持っていることも多々あります。「△山」なんていう名前を出さなければ企画が通ったのに,ということも少なくありません。
この辺り,実に見極めは大事です。恩師といえども障害となることあり。
客観的に,現実的に物事を見つめる必要があるでしょう。

6)手紙を終える
手紙を終えます。
連絡先を忘れずに書いたか確認してください。ときどき連絡先が住所だけの人がいたりします。電話やファックス,メールアドレスを入れておくべきでしょう。
できれば,職場と自宅,両方の連絡先を書き,「連絡は,携帯電話か電子メールでお願いいたします」とするのが,今風であるように思います。
職場の連絡先をも書く方がプロフェッショナルな感じがします。個人的には職場の連絡先を書いていない人は,常勤であれ,非常勤であれ,職場では「ダメな人」と認識されているであろうと認識することにしています。

こういったものをまとめ,手紙とします。手紙は,そこそこ簡単に,といって短くなく,適度な長さでまとめれば完成です。
適当な長さというと,30枚くらい書きそうな人もいなくもないですね……そんな長いの,ダメですよ。
A4で3枚程度に収めたいところです。1枚じゃ短すぎ,1.85~2.48枚くらいがお勧め。
また,読みやすさは文章だけでなく,文字間や行間などにも影響を受けます。長すぎたといって,字を小さくして,行間を詰めたりするのはもってのほかです。老眼の方も多し。

7)手紙とは別に用意するもの
ある意味手紙より大事なものです。付録(資料)です。もちろん付録ですから,「手紙」である必要はありません。ただ,その付録が何であるのか,紙片の片隅にメモをしておくことを忘れないでください。だいたい想像がつくものですが,「気が利く」と認識されるかもしれません。
付録で注意すべきなのは,翻訳の持ち込みです。

翻訳の場合:
(1)目次のコピー(訳,翻訳分担なども)
(2)原著の「コピーライト」ページ(「奥付」に当たる部分)
(3)序文もしくは「はじめに」などの訳
(4) (3)部分の原著のコピーなど

コピーが二つの意味で使われてます…

これらの付録を用意してください。
いくつかの会社に聞いてみたのですが,どこでも(1)と(2)は必須でした。(3)もあるとありがたい場合が多いです。(3)は,腕前を見るという会社もありましたし,原著1頁あたりの日本語の文字数を知り,全訳すると何ページになるか,簡単に見積もるためというところもありました。(4)も,(3)と同様,ページ数をカウントするためです。

翻訳以外の場合:
(1)目次立て(複数執筆の場合,分担も)

は必須です。
この場合,各章ごとに,どういう目論見で書かれるのか記すとなおよいでしょう。
また,論文集の場合,どの雑誌に掲載された論文か,書誌データを入れておくとよいでしょう。

8)その他
その他にあるとうれしいものは,
・履歴書
・今までに書いた原稿(抜刷)
・業績
といったところでしょうか。
履歴書といっても,顔写真とかは普通はいりません。絶世の美女とかならあってもいいかも(半分ウソ)。あと,就職するわけではないので,出身中学とか,高校とか,普通免許所持とかも,当然いりません。履歴書といっても,本の奥付の上にあるような,「略歴」で構いません。
なお,執筆者が出身大学や出身大学院で決まるということは,ほとんどありません。専門出版社にとって「ハーバード卒」はさすがに珍しいですが,「T大」「K大」はさして珍しいものではないからです。大学出版会など,気にするところもあるかもしれませんが,それは別の文脈ですし,第一位の基準にしているところはほとんどないでしょう。
反対に,職歴なんかが充実していると,興味が深くなるかもしれません。「××学会特別賞受賞」といったのは,少し萌えることもあります。
ある種の専門書の場合,現役「講師」の方が,教科書採用の理由から,企画が通りやすい,ということはあります。そういう意味では質を問わず,持っている「講座」を書くというのはプラスでしょう。カルチャーセンターだって構いません。
また,「今までに書いた原稿」というのは,たとえば,雑誌論文のコピーといったものです。寄稿や投稿論文がある方はしっかりと添付しておくといいでしょう。
HPやブログを紹介される方もおられますが,そういうところに掲げた専門的な論文は,雑誌論文と同程度に評価されるといったら,正直そこまで行きません。文章の上手下手を見ることはあります。
一方,面白おかしいHPを行なっているということが好印象につながるということは十分にありえます。

ともあれ,手紙で大事なのは,「いい文章」であることです。
この手紙で,文章の功劣が見られていることを十分に認識する必要があります。
といって,「文学」を目指す必要はありません。人柄を忍ばせるような誠実な文章が大事でしょう。




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