心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

【永久の恋人か】専門出版社に持ち込むための企画書の書き方⑤【一夜妻か】

2005-12-20 19:50:34 | 企画書を書こうという企画
5:出版社の選び方


さて,本当は,企画書が作る前にやっておくべき仕事があります。
それは,まったくもって永遠のテーマであるところの,

「どこの出版社で出すか」

という問題です。

この問題を考えていくには,いくつかの前提があります。
企画=専門書籍という前提です。専門分野・専門業界というのがあるというのも前提で,その業界に強い出版元があるというのも前提です。
ま,たいていの業界には専門雑誌があったり,専門の出版元が存在するでしょう。(専門書版元がない業界があれば教えてください。その業界に乗り込みます。)

さて,こういう前提のもとに企画を持ち込むとしたら下記のような出版社が考えられるでしょう。psy-pubのテキトーな区別ですが。

1)純粋専門出版社
2)学際的専門出版社
3)学術総合出版社
4)大学出版会
5)超大手
6)遊撃的出版社
7)その他

1)と2) この二つは,基本的には似ていますが,出版社のそれぞれの成り立ちによって,たとえば,社会学と教育学を出していたり,医学と看護学を出していたり,と幅があるもの 2)と,まったく幅がないもの 1)が考えられます。
いわゆる「専門出版社」は,たいていは2)ですが,研究所の出版部門や研究者が始めたような出版社ですと,かたくなに1)だったりします。
専門職について数年~十数年たち,いろいろと本を買い揃えると,けっこうその業界の出版社について詳しくなりますし,そうなると,たとえば,A社が昔は法学しか出していなかったのに,最近は社会学関係を徐々に出すようになった,ということがわかるようになるものです。
会社の世代交代や編集者の移動,業界の推移,営業展開などなどによって,出版傾向が変わります。ある程度分野を固定化した専門書出版社でさえ,立ち位置を微妙に変更します。
「最近,あの会社,がんばってんなぁ」という裏には,単にイキのいい編集者が入ったとか,腕のいい営業マンがスカウトされたとか,なんていう事情があったりするんですね。
この専門書店は,基本的にはその業界の人がもってきた企画であれば,「前向き」に検討をしてくれることでしょう。専門家が出すならば,一番回答率が高いのもこうした出版社です。
読者がどこを向いているかにも詳しいので,たとえニッチなニーズのものでやってくれる可能性が高いです。
ただし,たいていの専門書出版社は「零細企業」なので,さまざまな「条件」(後日語られるでありましょう)がつくこともあります。
編集者はクセモノが多い気がします。
◆編集モノを組みたい場合はここがベストか
◆論文集なども可能
◆書き下ろしも可能
◆大学教科書
◆翻訳(実践的なもの,学術的なもの)向き
◆一般向けの本は難しい


3)の学術総合出版社は,たとえば人文系全般の書籍や理科系全般の書籍を数多く出すような出版社のことです。上の1)や2)に比べて,営業力が大きく,刷り部数も若干多めです。地方の主要駅の目の前にあるような中規模書店にも配本していたりします。
また,出版して自慢になるのも,この出版社のランクでしょう。一般の読書好きなら知っています。
ただし,この手の会社は昔ながらの老舗が多く,敷居が高いのも事実で,破格のオリジナリティが求められることでしょう。
編集者はインテリゲンチャタイプです。
◆唯一無二のオリジナリティの高い書籍
◆翻訳(格調の高いもの)
◆やや固めの一般書ライクなものもOK
◆敷居が高い


4)大学出版会というものが多くの大学にはあります。大学の事務方の一部門になっていたり,別組織となっていることもあります。細々とやっている所もあれ ば,何億という売上げを誇る会社もあります。しかし基本的には際限なく営利のみを追求する経営方針ではないですし,大学側から出版助成などが得られること も多く,大学に所属する研究者であれば,門を叩いてみるというのは手でしょう。
博論を出すためだとか,他の版元に断られた後に利用する――というようなイメージもなくはないですが,最近は独立法人化のあおりを受けてか(?),フレッ シュな本を作ることが多くなりました。学術的には重要なテーマでも,営業的に採算があいそうもないときには,最初からここに企画書を回すのもいいかもしれ ません。
ここの編集者もインテリタイプが多いです。小規模の大学出版会ですと,小役人的な人も多いかもしれません。
◆発行部数が少ない翻訳
◆博士論文
◆編集もの
◆教科書
◆出版会によっては,当の大学関係者ではないと出せない場合がある


5)の超大手とは,K談社とかK川書店とかS潮社とかS英社とかのこと。敷居が高そうですが,意外に3)よりも,楽に企画が通ることもあるようです。そして,よっぽどの内容ではない限り,3)と刷り部数は大して変わらないのではないかと感じます。
また,これら超大手で出していて,激増する「新書」はかなりの狙い目とも言えます。当たれば,100万部の世界です。家が建ちます。
ただし,内容は専門的にはできず,どうしても一般的にする必要があります。最低でも1万部は売れそうな本が求められます。といっても,当たり前ですが,すべてがベストセラーになるわけではありません。
なお,大きい版元で出すと,ベストセラーになるならないに関わらず,同業者からやっかみや非難を受けることがあります(しかし,何ゆえか新書はそう言われません)。「印税長者」「タレント」「文化人になりたいクチ」「ミーハー」などの誤解を受けることがあります。
大きい会社だけあっていろんな人がいますが,学術書をやっている編集者は変人気質が多い気がします。
◆一般向けの実用書
◆一般向けの翻訳書
◆新書など


6)の遊撃的出版社とは,なぜかときどき「その業界の本を出す」というくらいの意味です。
出版社の数は,1千~2千くらいはあるんじゃないかと思いますが(出版業界の健康保険組合に入っている事業者は2005年現在約1,300[流通取次店含 む]),編集者の転職などによって,急にある専門分野の本を出すようになるとか,急に出さなくなるといった現象が発生します。
また,大して大きい出版社ではないのに,いろいろな分野の本を出している過活動的な会社もときどきあります。こういう会社はかなりの営業力があることが多く,編集者も体育会系だったりします。1年に一発当てることで生きている会社もあります。
ともあれ,この手の会社は「○○業界が好きな編集者」といった人材が一人いるということで,その人材がいなくなると,もうその手の本は作らなくなったりすることが多いのです。
アプローチするならば,「出始めた」というときが好機です。その好機を逃すと,まずムリでしょう。
編集者はガッツマン・タイプ(って何だそりゃ)です。
◆何でもこい!
◆ばっちこい!
◆ほとんどロプノール


7)その他:見方を変えて
絵本や思春期向け,あるいは高齢者向け,サラリーマン向けなど,読者層がかなり的確に想定できる場合は,その層に強い出版社に企画を持ち込むという手もあります。
青年~中年が読者として想定されるなら→サラリーマン向け→ビジネス書の一環として出す手もあるでしょう。あるいは高齢者向けでしたら,高齢者向けの健康雑誌などの版元などと見方を変えると,こちらの企画を必要とする版元が見えてきます。


さて,自分の企画はどんな会社に合うでしょうか。

「専門書」を出すことは,人生をかなり変えます。
多かれ少なかれ,業界の人々に知られることになりますし,羨望も非難も受けるでしょう。
本の出版が転職に影響を与えることもあります。また,就職については変わらずとも,本を出すことで,講演などが増えるということもあるようです。

そのあたりを鑑みつつ,出版社を選択すると,いろいろと見えてくるかもしれません。
あるいは混沌……?。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (【家族心理.com】管理人)
2005-12-20 23:43:36
 本当にありがたい内容です。足を向けて寝れませぬ。

 一生に一度くらいは自分の著書を持ちたいと思っておりますが、その日は来るでしょうか。(いやもちろん自問自答ですよ。質問ではなく。)
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Unknown (Deco)
2005-12-21 02:47:21
遠い遠い将来のために,このシリーズ保存しておきます!
返信する
Unknown (psy-pub)
2005-12-21 14:47:02
コメント,サンクス屯です。



よ~し,お父さん,がんばちゃうぞ~





研究者・専門職であれば,だれでも少なくとも1回くらいはチャンスがあると思います。

勘で言っているだけですけどね。

その本が売れれば,もう2回はチャンスが転がります。



頑張ってくだされ。

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