心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

【今年は】専門出版社に持ち込むための企画書の書き方⑨【終了ってことでヨロ】

2005-12-27 16:35:40 | 企画書を書こうという企画
9:企画書制作上のコツ


ハヨ書けってなテーマですが,いくつか。
ベストセラーのコツがないように――つうか,あったら,大もうけですぜ,旦那――完璧に通るコツはないのですが……


・似た本を探す
自分のイメージしているものに似た本というのが,きっとあるはずです。たとえば,「上野千鶴子『スカートの下の劇場』の,分子生物学版を作りたい!」とか(イメージ湧かねぇが),そういうような。
換骨奪胎。目次立てにオリジナリティは要りませんから,そういうところでも,似ている本があれば,企画が立てやすい。また,最高の本の,気に入らないところを直せば,最高の企画になるわけですから,真似てください,真似て。
上野千鶴子先生の例だと,どういう出版社で出せばいいのかイメージが沸きませんが,同じ会社で似たような本があれば,その担当編集者に持ち込むという手も 可能になります。たとえば,「うつ病ハンドブック」という本があるとして,「統合失調症ハンドブック」を作りたいというような場合です。


・編集者に相談を持ちかける
どこかに編集者はいます。編集者と知り合いの師匠や同僚とかがおられる場合もあるでしょう。そういう人に頼んで,編集者を紹介してもらいましょう。できれば,一緒に飲みに行くというのもいいかもしれません。業界団体や学会のパーティーなどで会う機会もあるかもしれません。
あとはメル友にでもなって,話題を交換する。次第に仲を深めます。否,別に友だちになる必要はありませんね。ともあれ,知り合いになったら,「こういう本 を出したいと思っているのだが」と率直に伝えましょう。飲んだ席だと適当に流されることもありますので,後日,メールなどで正式にお願いするのがよいで しょう。
基本的には,相談するモードです。
「こういう本を出したい」とイメージを大事にしつつ,「それを出すにはどうしたらいいか?」と尋ねるのです。
人は頼りにされるとそれなりに嬉しいものです。編集者も人の子。いろいろと出版事情や市況を教えてくれるはずです。その編集者のところでは断られる可能性 もなくはないですが,他の出版社を紹介してもらえるということもあるかもしれません。どちらにせよ,企画書を書く必要はありますが。
アルコールホリックでない方,人間力に自信のある方はやってみてください。けっこう,こうしたちょっとした出会いから本ができることは多いです。


・複数持ち込む
これはある著者の先生から聞いた方法です。「複数の出版社に持ち込む」というふうに思ってしまう方があるかもしれませんが,そうではなく,複数の企画を1つの出版社に持ち込むのです。翻訳なんかがいいみたいですね,特に。
3~4冊くらい企画を同時に持ち込むと,断られにくいとか。
もちろん,これは他の出版社で出版歴があったり,それなりにパワーがあったりという人ではないと効果は期待できないのですが。
とにかく,その著者によれば,編集者はどれかを選ばなくてはならなくなる(確かに,そんな気分になります)。つまり,出版すること(企画を通すこと)が前提になってしまうのです。
高度な技です。


・タイトルでつかむ
ようやく真っ当な「コツ」がでてきました。やっぱ,本の命はタイトルです。
専門書の編集者は,思いもかけないほど,多くの本を一年間に作っています。マジメなタイトルもあれば,人を食ったタイトルもあり,内容に不一致なタイトルもあり,千差万別。といっても,そのタイトルに命をかける様は,切ないほど美しい(嘘
ま,ホント,最後の最後まで悩むのがタイトルです。
これが「企画段階」からビシッと決まっていれば,こんなに助かることはありません。
普遍的ないいタイトルなどありませんし,会社によって好まれるタイトルの傾向が違うので注意してください。当然,想定される読者によっても,タイトルは異なります。
どういう人に手にとってもらいたいか,によってタイトルは大きくことなるでしょう。
専門家向けであればあるほど,「細かく具体的な内容」と「細かく具体的なタイトル」が望まれます。詩的なタイトルは,サブタイトルまでに留めておいた方が無難です。
また,「入門」「マニュアル」「ガイド」「手引き」「ガイドブック」「わかりやすい」「図解」といった《やさしい》がイメージされるキーワードは,読者の裾野が広くなるので,編集者のウケがいいものです。
業界での「流行」のキーワードが入っているものも当然ウケがいいでしょう。
そのためには他の著者がどういう本を出したのか,類書は何か,といったことを調べておく必要があることは言うまでもないですね。


・売れることを訴える
売れることを訴えない企画は,まずありえません。売れない本など,そもそも発刊する意味すらないものです。いくら弱小の出版社といえど,利益にならない本を作るつもりはないのです,結果として赤字になったとしても。
そういう意味で,売れることを訴えましょう。
大きく出ましょう。初版3万部? そら,出すぎですがな…。
実際のところ,専門出版社だったら,同分野で売れる部数についてかなり正確な数字を持っています。ライバル会社の本についても,部数を把握しているほどです。
ですので,たとえ,専門家である企画者が「1万部は固い!」とのたまったとしても,出版社は「そんなことあらへんがな」と考えます。
なので,マーケットはどのくらいなのか? そのマーケットのうち,どのくらいに買ってもらえそうか? 自分が直接売れるのは何冊くらいか? といったことを,学会名簿や団体名簿やら自分にきた年賀状などを手繰りながら計算機片手に考えてみるのがいいでしょう。
優秀な著者ほど,この数字をしっかりと把握しています。(ベストセラー作家でもある専門家の方に,専門的な本を出してもらったことがありますが,その方は「私の専門書は4千部がいいところです」と言いました。結果は答え通りでした。)
しかし,初めての企画の人に,ここまでのことをしろとは言いません。部数が現実的でなくともいいのです。楽観的な数字であってもまったくいいのです,楽観 的すぎなければ。それよりも「このくらい売れるはずだ!」というような情熱がある,ということがまずはありがたいのです。


・想定読者数の目安
以下はまったくの目安ですが,想定読者数が

・2000部程度→専門書出版社なら印税ありで受ける
・4000部程度→他の出版社でも印税ありで受ける
・1000部以下→買取要求or自費出版かも
・200部以下→企画をやめなさい

もちろん,会社によってずいぶん違います。
ほんの目安です。


・ライバル社に売り込む
「昔から同じような研究をしていた奴がある会社から本を出した。けっこう売れているらしい。オレからの文献引用が多いのにムカ~」
「自分の意見と異にする××主義の見解がある会社から本になった。まったくどういうこっちゃ」
こういう場合,「ある会社」のライバルと目されている出版社に自分の企画を売り込むことはけっこういい手です。
ライバルのチャンスは自分のチャンス!なのですよ,お互い。ま,そのライバルの本が売れてなければ,使えない手ですけどね。


・いろんな出版社を使わない
いろんな会社から本を出す人がいます。好きでやっているのならばいいんですが,編集者としてはお勧めしません。
どうしてかと言うと,
A社で本を出し,B社で本を出し……と転々としているということは,

1)本が売れなかった(もし,売れたらA社としてはその著者を囲いこむものです)
2)その著者の性格が悪い(二度と一緒に仕事をしたくない,と思う方もいることはおります)
3)ものすごくてこずった(原稿が遅い,文章がひどい)

のどれかじゃないか,と敬遠するのです。
今までに3冊出していて,それがすべて違う会社という人は,あまり付き合いたくない気がしますね……

もちろん,××先生(自主規制)のように,超有名人でしたら話は別。


・推薦をつける
確実に,その会社に対して利益を与えており,業界にパワーを有し,その編集者とも実に親しい……という方が身近におられたのなら,「推薦」をいただきましょう。損はないはずです。
ただ微妙な場合も多くあります。出版社が推薦者自身にあまりいい印象をもっていないというときもけっこうあります。特に分野によっては,出版社により,価値観や信条が大きくことなることがあるので,「ただエライ」というだけでしたら,推薦は要らない場合の方が多いです。


・企画がまとめられない!
「思いがありすぎる。いろいろ書き込みたい。そんなことを考えたら,企画がまとめられない。だいたい,本1冊書こうと思っていることを,どうやってたかだか原稿用紙2枚にまとめられるのさ!」
とお思いの貴兄,誠に同感です。
が,そんな甘いことを言っていないで,とっととまとめてください。
読者は,貴兄の本を1冊読んでから買うわけではないのです。たいていは,カバーについたコメントやタイトル,帯だけで買う/買わないを決意するのです。
反対に言えば,企画書も,貴兄の本のタイトルやコメント,帯を想像しつつ,作ってみればいいかもしれません。
「ウリはどこか?」
「他の本との差異はどこか」
「どんな読者にアピールする本か」
「帯につけるとしたらどんな文句か」
「《まえがき》や《あとがき》をつけるとしたら,どんなものを書くのか」


・企画書の文面
読みやすさが一番です。手堅い文章を心がけ,また,文学的でなくてもよいでしょう。
熱が入って長くなってしまう方がおられますが,長すぎるのは読むほうにとっては辛い。


・リアクションは早く
企画書を出した後,それに対して編集から注文なり意見なりが返ることがあります。
このとき,リアクションの速さ,的確さ,丁寧さなども見られています。
学校の先生みたい? あるいは,企業の面接?
ま,でもビジネスパートナーを選ぶんですもん,当たり前でしょう。出版社が市場で流通する本を作るのには,制作費として人件費を含め100~200万円程 度が最低でもかかります。本を作るということは,著者にその金額を投資するということです。200万を払うべきか,さまざまな側面で見られているのは当然 といっていいでしょう。ユングは「聖なる結婚」とサイコセラピーをたとえましたが,出版における著者-編集者関係は「ちょっとした結婚」です。恋愛よりも ずっと経費がかかりますから。
企画段階でレスポンスの良い人は,本を作るプロセスでも,その後の売るプロセスでも確かなように思われます。


・企画がボツにされたら
何がダメか編集者に聞いてみるという手もあります。どういうところがダメだったのか様々な面から聞いてみると,きっといろいろ教えてくれるでしょう。(ただし,傷つかない程度に…だったりしますが。)
その編集者は新しいコネです。そしてまた違う企画のときに世話になればいいのです。



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2 コメント

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はじめまして。 (nori)
2006-01-04 00:42:11
はじめまして。

興味深く拝見いたしました。



分野は全くちがうのですが、

「出版社」「企画書」について

少し調べていたところ、

流れがすっきりいたしました。

感謝いたします。

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コメントありがとうございます (psy-pub)
2006-01-04 14:40:30


>noriさま



コメントありがとうございます。あくまで学術専門書の話ですので,どこまでお役に立てるかというところですが,詠んで下さってありがとうございます。



貴ブログを拝見し,確かに分野は全く違うのですが,とても興味深いブログですね。ぜひ頑張って頂きたいです。今後とも宜しくお願いします。
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