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いもうとよ-6

2017-03-28 16:55:31 | Weblog
こんにちは~、マリーで~す。

今日はまずちょっとはなしがずれるけど、ねえ、ポルボロンていうお菓子知ってるかしら。スペインのお菓子なんだけどポルボロンていうのは粉になるっていう意味なんですって。口に入れると簡単に崩れて粉々になっちゃうの。昔はメルセス会っていう修道会のシスターのつくるポルボロンが有名だったけど、今はそれを作っていたシスターがスペインに帰っちゃったからメルセス会では作っていないのよね。でもって、四ッ谷の駅前の大きい教会なら大抵日曜日には手作りお菓子を売るコーナーでメルセス会のとは違う製品のポルボロンも作って販売してるわ。でも今度、四ッ谷の駅の近くに聖パウロ修道会の書籍や聖具を扱う部門とは別に、修道院製の食品とかいろいろを扱う部門が新しいお店を出したわけ。そこに新しくトラピスチン修道院のシスターのつくるポルボロンが出るってきいて、うちのおばはん、わざわざそれを買いに出かけたのよ。

教会のほうのポルボロンならお菓子作りのグループにいたから、あの人でも材料や作り方も知ってるんだけど、トラピスチンのポルボロンは食べたことがないから試しに味見しなくちゃとかって、買いにいったわけ。材料は教会の奉仕部のポルボロンよりいいんだけど、味は好みがあるから何とも言えないっていうのがうちのおばはんの意見。それはそうよねえ、自分でいいと思ったものを選ぶしかないわよ。

ついでに聖三木図書館にも寄ったら、図書館の年会費が今年から3000円が2000円に下がってたってあの人喜んでたわ。足腰の調子が悪くなってあんまり四ッ谷にも行けないんだけど、キリスト教関係のものだったらやっぱり聖三木図書館は書籍が揃ってるんですって。昔と違って本の管理も区立図書館と同じように勝手に持ち出そうとすればすぐにブザーが鳴るし、必要な本はパソコンで検索できるし、昔、まだおんぼろ図書館だったころから見てると大変な変わりようだって、びっくりしてたの。

それはいいけど、そろそろ話を続けなくちゃね。うちのおばはんが高校三年の三学期の二月に、もともと丈夫じゃなかったお母さんが慢性腎炎の末期で亡くなっちゃったの。あの頃だからまだ透析も無かったし、救急車で病院に運ばれて、親類がみんな集まってきて、翌日の朝にはもうだめだからって、病院に呼ばれたの。ところがその日は高校の最後の期末テストで、思い出せばあの人、めそめそしながら学校に出かけてテストの答えもまともに書けないし、電車の中でも涙が止まらないままだったのよね。

お家に帰るとすぐにもう冷たくなっちゃったお母さんが病院から運ばれてきて奥の間の布団に寝かされてたのね。それであの人、お母さんの唇に最後の口紅をつけてきれいな寝顔にしたのよ。

翌日火葬場に行ったんだけどさ、その日は二月半ばでは珍しいような大雪が降っていたのよ。火葬場であの人、全然泣かなくて、平気な顔をしてたから親類のおじさんやおばさんに、なんて子なのとか言われちゃってたけど、ほんとはそうじゃなかったのよ。お母さんの死を受け入れられなかったから、あの人の心の中ではその後、長い間、何年も何十年もお母さんは死んでいなかったのよ。人は外見だけ見てああでもない、こうでもないって、適当なことを言うけれど、本当はそんな簡単なものじゃないんじゃないのかしら。

この話はまた後で出てくるから今はこれだけにしとくわね。でも、ひとつだけ付け加えると、お母さんのために並んだ喪の花輪の中に、その頃はお父さんも仕事で現役だった頃で、その関係でサントリーさんからの花輪も並んでたんですって。開高健さんがサントリーの重役だった時代で、仕事の関わりがあったらしいわ。だからあの人、今でもお父さんとお母さんのためにお父さんの仕事のお得意さんだったホンダさんとサントリーさんには感謝しちゃってるのよ。

妹のみいちゃんのほうは、中学の途中からずっと不登校になってたの。それでもお情けで卒業して親たちが洋裁の専門学校に入れたのに、これもすぐに不登校になって、自分の部屋に籠もってしまったの。なまじっか、生活には困らない家だったから、親も心配はしても仕方なく放任していたのよ。でも母親がいなくなってしまうと、父親も子供たち三人も、それまでのような生活は続けられなくなったの。

お母さんがいなくなって、たがが外れちゃうと、姉娘のうちのおばはんたら自分で大学進学も止めちゃって、とりあえず習いものをしてたけど、でもどうせだから手に職をつけようってんで当時だから和文のタイプを習ったの。読んだり書いたりはその頃から得意だったから向いてたんだかなんだか、その方向で就職しちゃって、結局和文タイプだとか写真植字なんて仕事をしてたのよ。

うちのおばはんはそんなことだったけど、その間に、あの人のお父さんが、さすがにこのままでは家の中もどうにもならないってことで再婚したわけよ。それが今の義理のお母さんなのね。

そこからがまたいろいろなんだけど今日はここでおしまいよ。ほんじゃ、またね。