ターコイズ別館・読書録

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35 最後の遭遇 柘植久慶

2007-08-26 19:31:05 | た行
 徳間ノベルス。

 1945年、フィリピン、ルソン島。山村太郎とジョン・ブラウンは、味方を失いお互い孤軍となってしまう。技量、体力、精神力、知識、運、すべてをかけたサバイバルが始まる。

 圧倒的なリアリティ。新兵器も、都合のいい救援も、奇跡も何も起こらない。
 あるのは、1センチでも死から生に近付こうとする営為のみ。
 逆光では見えない。目に土が入ったら決してこすらず水で流す。蛇がいるから藪には入らない。レンズで着火する。非常用食料には、チョコレート。

 敵味方が400メートルに布陣しているというのも興味深い。思ったより近い間隔だ。
 二人は、よく独り言を言う。ときには、方針の確認のためにつぶやく。ときには、くじけないように、自分を鼓舞するためにつぶやく。声に出して、明確化するのだ。

 ドッグイアー。

#「焚火を始めるときも気をつけにゃならんことがある」父親が続けた。「冬はな、風通しのよいように組んだら、上から火を点ける。夏はその逆でな、やはり風通しに注意して薪を組み、下から火を点けるんだ」
「ふーん」
「夏下冬上って言うんだ。よく覚えておけよ。大切なことだからな」