ターコイズ別館・読書録

――図書館へ行こう。

177 親馬鹿力のおかげです 林家木久扇・林家木久蔵

2010-12-25 07:53:06 | は行
 図書館より。岩崎書店。

 ここまでお坊ちゃんだと、すがすがしい。例えば小さん師匠の孫、柳家花禄は祖父と比べられることを嫌がっているそうな。二代目は心から親を尊敬している。人を信頼している。疑うことを知らない純粋培養。大丈夫かと心配になるほどだ。

 初代、現木久翁の若いころが読める。親は雑貨商で結構資産があったが、戦争の爆撃ですべてを失った。生活保護を受けるために離婚したら、本当に別れてしまった。妹がいたが父に付いていった。新聞配達、廃品回収、映画館のバイトをして家計を支えた。

#だからぼくは、自分が親になったとき、「なにがあっても、この子達の父親でいよう」と決めました。

#ぼくら落語家は父親になると、煎った豆がポンとはじけるように「一皮むける」ことが多いのです。
 せっかく授かった子どもをちゃんと食べさせていかなきゃと思えば、これまでのやり方じゃ駄目だと気付くもの。稽古にだって熱が入るし、周囲とのお付き合いも丁寧になります。(略)つまり、欲が出るんですね。お金のことだけではなく、生きるということ自体に前向きな意欲が湧いてくる。

#(小朝師匠が二代目に)過去の名人たちの落語をぜんぜん聞いたことがないというから、テープを貸して勉強させようとしたら、
「聞けないんです」
 なぜかといえば、すでに亡くなった人の声だからこわいんだそうですよ。