1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2/27・霊の哲学者、ルドルフ・シュタイナー

2013-02-27 | 思想
2月27日は、『エデンの東』を書いた米国作家ジョン・スタインベック(1902年)や、米国の消費者運動家、ラルフ・ネーダー(1934年)が生まれた日だが、神秘思想家、ルドルフ・シュタイナーの誕生日でもある。
世間では、その著書『神智学』や「シュタイナー教育」などによって知られるシュタイナーだけれど、自分の場合は、文豪ヘンリー・ミラー、神秘思想家クリシュナムルティを経由して、シュタイナーを知るようになった。

ルドルフ・シュタイナーは、1861年、オーストリア帝国(現クロアチア)に生まれた。父親は鉄道員だった。
シュタイナーは、幼いころから、物質世界を超えた霊の世界を感じていたらしい。カントの哲学書を読み、自然科学を熱心に学んだ彼は、22歳のとき、ゲーテの自然科学に関する著作を検討、整理し、序文を書く仕事を依頼された。それからゲーテ研究に励みだし、14年後にようやくその仕事を完成させた。
41歳のとき、神智学協会の会員となり、協会のドイツ支部の事務総長となる。
そして、神智学協会が、インドで見いだされた新しい救世主、クリシュナムルティをあがめだすにいたって、反発。51歳のときに協会から脱退。人智学協会を設立し、以後、独自の理論による学校教育に情熱を注いだ。1925年、64歳で没。

自分はシュタイナーの『血はまったく特製のジュースだ』(高橋巌訳、イザラ書房)という本を持っている。
書名は、ゲーテの『ファウスト』のなかで、悪魔メフィストフェレスがファウスト博士に、
「血はまったく特製のジュースだ」
と、血で署名した誓約書を求めたところからきているそうだが、この本はシュタイナーの講演をまとめたもので、これを読むと、彼がどういう考え方をしていたのかが、うっすらとうかがわれる。それは、おおよそこんな風である。

物や、動植物、そして人間は、まず物質的な存在としての肉体をもっている。
単なる物とちがって、動植物と人間は、生命的存在としてのエーテル体をもっている。
さらに、動植物とちがって、人間は、感覚的な存在としてのアストラル体をもっている。
人間は、このアストラル体としての存在であるために、快感や苦痛を感じたり、喜び、また悲しんだりできるのである。
多くの人は、肉体的な存在は見えても、エーテル体やアストラル体の存在は見えないかもしれない。しかし、見える人には見える。
人間は、物質的な肉体と、生命的なエーテル体、そして感覚的なアストラル体をもち、さらに自身の内的生命である「私」をもっている。
そして、「私」のなかには、霊性が宿っている。
太古の同族内の純潔が守られていた時代には、人はこの霊を見る力があったが、別の部族との混血が進むと、しだいにその能力は失われてしまった。その代わりに、混血によって、知性や論理性が備わった。
肉体が物質の表現であり、神経組織がエーテル体の表現であるように、血は「私」の表現である。人間の血のなかには「私」の本質が生きている。
だから、悪魔は、血の誓約書を書かせ、血を支配することで、「私」という自我を支配できるのである。
と、そういうことらしい。

「わけがわからん」
人によっては、そう思われるかもしれないけれど、自分は、けっこうおもしろい考えだなあ、と思う。
東洋的な霊魂の、ヨーロッパ的な分析的アプローチというか。
おもしろいだけでなく、そうかもしれないなぁ、とも思う。

こういう考え方をするシュタイナーは、とうぜん「私」や、その内に宿っている霊性を重んじるわけで、彼は、
「現代人はスズメバチのようだ」
と言ったそうだ。頭ばかり発達して、意志がない、と。
子ども向けのシュタイナー教育では、音楽に合わせてからだを動かしたり、色の塗り重ねや、にじみ具合を楽しむことをするらしい。そうやって、肉体、エーテル体、アストラル体、そして「私」を刺激し、霊性を育てようとするのだろう。

現在の自分には霊は見えないのだけれど、いつか見えるようになりたいものだと、ぼんやり期待している。
「血はまったく特製のジュースだ」
自分は、このことばに、悪魔メフィストフェレスの、或る誠実さを感じる。
(2013年2月27日)

著書
『12月生まれについて』

『新入社員マナー常識』

『ポエジー劇場 子犬のころ』

『ポエジー劇場 大きな雨』
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