1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2/28・最初の石、ブライアン・ジョーンズ

2013-02-28 | 音楽
2月28日は、世界最初のエッセイスト、モンテーニュ(1533年)、幕末の思想家、佐久間象山の(1811年)が生まれた日だが、ザ・ローリング・ストーンズのリーダーだったブライアン・ジョーンズの誕生日でもある。
自分はブライアン・ジョーンズが好きで、まだコンパクト・ディスクがなかった時代、ローリング・ストーンズから脱退したブライアン・ジョーンズが、ひとりでアフリカのモロッコへ行って、現地のミュージシャンの演奏を録音して作った「ジャジューカの笛」のレコードを持っていて、ときどき聴いていた。
ただ、淡々、延々と、笛と太鼓の音楽が流れるだけの音楽で、退屈ではあった。途中にちょっと人が咳き込む音が入っていて、それが妙にさびしく聴こえた。演奏があまりに淡々と続くので、聴いていて、
「なんで自分はこんなものを聴いているのだろう」
という気持ちになってくる、不思議なレコードだった。
では、こりて、一度聴いたきり、二度と針を落とさなかったかというと、そうでもなく、ときどき聴きたくなる、不思議なレコードなのである。

ルイス・ブライアン・ホプキンス・ジョーンズは、1942年、英国イングランドの、ウェールズに近いグロスターシャー州で生まれた。父親はウェールズ人の航空技師で、ピアノやオルガンを弾き、教会で聖歌隊のリーダーを務めた人で、母親はピアノ教師。中流階級の音楽一家だった。
ブライアンは4歳のとき、喉頭炎にかかり、その後遺症で生涯ずっと喘息をひきずることになった。
十代のころ、両親に買ってもらったサキソフォンとアコースティックギターを弾き、学校の音楽部ではクラリネットを吹いた。
ブライアンは知能指数が135あったが、まったく勉強に興味を示さず、学校や権威に対して反抗的で、ほとんどの教科のテストで0点をとった。それでも、物理、化学、生物など理科系だけは優秀な成績をおさめた。
17歳のとき、14歳のガールフレンドを妊娠させた。ブライアンは堕胎をすすめたというが、娘は男の子を出産し、養子にだした。
フライアンは退学となり、ギターを片手に夏の北欧を放浪してまわった。路上でギターを弾いてはお金を稼ぎ、知り合った人にたかってその日その日をしのぐ旅だった。
ロンドンに出て、デパート店員をしながら音楽活動を続けていたブライアンは、20歳のとき、ジャズクラブで、ミック・ジャガー、キース・リチャーズに出会う。意気投合した3人は、ロンドン市内の安アパートで共同生活をはじめた。
食べるものにこと欠く極貧の生活だったが、それでも音楽に没頭する生活を続けた。
彼ら3人は、ベースギターのビル・ワイマン、ドラムのチャーリー・ワッツを加え、創成期のザ・ローリーング・ストーンズのメンバーがそろった。ストーンズは、あちこちのクラブで演奏をし続けた。
ストーンズは1963年6月にレコードデビューを果たした。彼ら5人は、すでに人気絶頂のスターだったザ・ビートルズと対照的に、不揃いな、不良のイメージを押しだす戦略で、人気バンドとなった。
当初、ストーンズは、すでにあるリズム・アンド・ブルースの楽曲を演奏するコピー・バンドだったが、マネージャーの意向で、ミックとキースの作詩作曲コンビが作ったオリジナル曲を演奏するようになった。それにつれて、バンドの中心だったブライアンは、しだいにすみへ追いやられていく。
バンドの人気が高まるにつれ、麻薬に傾倒していったブライアンは、ついには音楽演奏ができない状態になり、自分が作ったバンドから解雇されることになった。
1969年7月、ブライアン・ジョーンズは、自宅のプールに沈んだ姿で発見された。27歳だった。ブライアンの死は、アルコールとドラッグによる溺死、事故死とされているが、他殺説も存在する。

キース・リチャーズの自伝「Life」には、彼とミック・ジャガーと、ブライアンが3人で極貧の共同生活を送っていたころのことが描かれている。部屋は散らかし放題、キッチンには、積み上がった皿がカビの塔と化した、不衛生きわまりない暮らし。お金がなく、食べるものがなくなり、彼らは困り果てた。すると、ブライアンが、
「よし、あいつにたかろう」
と、友人をつかまえて、彼ら3人におごらせた。ブライアンは、そんな家族を食べさせる家長のような役割を果たしてもいたようだ。
そのころの生活について、キース・リチャーズはこう言っている。
「もしも、おれが、ストーンズの歴史のうちの、どこか3カ月間の日記を見られるとしたら、この時期のを見るだろうな。バンドが卵から孵化しようとしている時期だ」
If I'd had the choice of finding a diary of any three-month period of the Stones' history, it wouuld have been this one, the moment the band was hatching.(Keith Richards with James Fox, Life, A Phoenix.)
どん底の生活だったが、好きな音楽があり、何より、若さがきらめきが、そこにあった。
(2013年2月28日)

著書
『1月生まれについて』

『12月生まれについて』

『コミュニティー 世界の共同生活体』

『こちらごみ収集現場 いちころにころ?』

『ポエジー劇場 ねむりの町』

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