白日夢だったのかもしれないけど

2009年09月14日 16時53分00秒 | B地点 おむ

 

 

昨日からずっと、おむさんは憂鬱だった。
ヒガンバナのせいかもしれない。或いは、「秋の物思い」なのかもしれない。
ともかく、彼岸について、死について、あれこれ考えてしまうのだ。
おかか先生のことが、気になるのだ。
先生が「ガクッ」っと死んじゃったら、どうしよう?
と、そんなことを考えていたら、自分自身のことまで気になってきた。
「僕だって、いつかは死ぬんだ……」
「怖いなあ。死んだらどうなるんだろう……」
かえって、おかか先生のほうが、気を遣ってしまうのだ。
「おい。あんまり考え込まないほうがいいぞ」
「わかってます。でも、どうしても考えちゃうんですよ」

「……そうか。困ったなあ」
その時、おごそかな声が響いてきたのだった。

「猫たちよ……」
「むっ? この声は?」
「ま、まさか、花が?」
「猫たちよ。おそれるな……」
「わあーっ! ヒガンバナが喋ってる!」
「おそれるな! 私は唯一至高の存在者である。存在そのものである。おまえたちが神とか仏とか呼ぶものである……」
「ええっ! か、神様ですか!?」
「ヒガンバナの姿を借りて、おまえたちに語りかけているのだ……」
「は、はあ」
「死をおそれるな。おまえたちの幸福な生は、既に約束されている。そのことを告げに来たのだ……」
「ほ、本当ですか! しかも神様がわざわざ」
「……う、ううっ。神様、ありがとう」
「おい、よかったなあ!」
「それから、白茶の猫よ……」
「は!? わ、私ですか?」
「お前には、特に言っておくことがある……」
「ハナクチョが付いておるぞ……」

「え、ええっ!?」
「みっともないから、取るがよい……」
「わ~っ、お、お恥ずかしい!」
「しかし、さすが神様。よくまあ、細かいところまで……」