魔法のじゅうたん

 

　お気に入りの場所で　最後に咲く桜

 

　あの八重桜が　こんなに散ったよ

 

　ピンク色の　魔法のじゅうたんで

 

　空高く舞い上がろう

 

　どうだい　うふふ　さあ飛ぼう

 

　一緒に行こうよ

 

　ね　おいで！

 

　高く　どんどん高く

 

　あの雲まで　飛び上がろう

 

　さあ行こうよ　魔法のじゅうたんで

 

　僕と一緒に　あの空へ

 

　高く高く　飛んで行こうよ

 

 

 

 

 

小さな花

 

　「さあ　今日は思いっきり草を食べるぞ」

　「はふはふ」

　「ひょぺ」

　「のあ」

　「んぐや」

　「ぎー」

　「へほっ」

　「ひぇら」

　「しゅぺろ」

　「にゃぐ」

　「こほー」

　「おあー」

　「えぐ」

　「へにっ」

　「ひょっ」

　「のはー」

　「あー　おいしいなぁ」

　「だが　そろそろ終わりにするかな」

　小さな花：「ああ、食べられなくてよかった」

　「えっ　何か言ったかね？」　「い、いえっ　別に　なにも」

　「花は食べないから　安心おし」　「お、おそれいります」

 

 

 

 

 

 

幸福の条件

 

	「おい　実にいい陽気じゃないか」 「ええ　日陰じゃないと暑いくらいですね」
	「あっ　ほら先生　鳥が」
	すいーっ
	ふわーり　ちゃぷっ
	すっく 「……優雅だなぁ」
	「僕も翼が欲しいなぁ　空を飛べたらいいなぁ」 「まったくだ　鳥に生まれたかったな」
	「おーい猫さんよ　私はね　あんたらのように　大地を駆け回りたいよ」 「えっ？」
	「……世の中って　うまくいかないものですね　先生」 「ううむ」

 

 

 

 

このやろー！

 

	「……ニャー？」
	「……ワン？」
	「ニャー！」 「ワン！」
	ダダッ 「おかか先生をいじめるなー！」 「ワ、ワン？」 「あっ　おい！」
	「このやろー！」 バシッ
	「キャヒーン、いきなり猫パンチ喰らったワーン」 「ふふん、他愛ない」
	「先生、もう大丈夫ですよ」 エッヘン
	「いや、あのわんこは旧友なんだ　偶然に出会って驚いてたんだよ」 ズコー 「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

舞台裏写真 実はわんこにびっくらこいて 瞳孔が開いてしまったおかか先生

 

 

 

 

 

無題

面白いわんこが来た

 

 

	「ピンクのじゅうたん　いい気持ですねえ」 「うむ　まったくだ」
	「ねえねえ　お兄さん！　すっごいサイトがあるんだワン！」 「わっ　びっくりしたー」
	「出会い率100％！　可愛いコばっかりなんだワン！」 「え？　ちょ　ちょっと」
	「必ずアクセスしてね！　完全無料なんだワン！　じゃあね！」 「あ　行っちゃった」 「何なんだ　あいつは」
	「…………」
	「……うーん　気になるなあ」 「おい　どうした」
	「ねえ先生　いったい今のは？」 「うむ　考えたんだが　今のはシャレだな」
	「サクラばっかりだねー　と言いたかったんじゃないか」 「あっ　なるほど」

 

 

 

 

 

残り花たちが笑いさざめく

 

	いやあ　ずいぶん散ったね
	これが全部 ストロベリーのアイスクリームだったら すごいだろうな
	タラコのほうがいいかな？　ははは
	うーん　桜エビだったらいいかもな
	そういえば 桜デンブってのもあったなあ
	くすくす　食べ物のお話ばっかりね
	おい　残り花に笑われたぞ それより先生　サクラデンブって何ですか？
	デンブとは「田麩」と書くんだ 魚の肉で作ったふりかけのようなものさ 食紅でピンク色にしたものを桜デンブと云うんだよ へえ　うまそうですね　魚の肉ですか
	魚のお尻の肉ですか？ そりゃ「臀部」だろ
	くすくす　くすくす けらけら　けらけら わっはっは　わっはっは

 

 

 

 

 

 

うすべに色の海の香に

 

	なんということだろう
	ぼたん桜が　たった二日で　こんなにも
	こうしてはいられない
	うすべに色の海に　さあ飛び込め
	うすべに色の海を　どこまでも泳げ
	かぐわしい香りにむせて 気を失ってしまうがいい
	ここに一条の光
	ここが　きっと　世界の中心点