菜の花の咲く頃 2008年04月12日 17時31分00秒 | B地点 おむ 「ねえ先生、恋をしたこと、あるでしょう?」 「んー?」 「何だい、急に?」 「いえ……」 「……菜の花が咲くと、思い出すことがあるんです」 「もう二度と会えないのかなと思うと、苦しくて」 「そんなふうな思い出は、私にもあるな」 「でしょう?」 「でも私は逆に、もうすぐ会えるに違いない、と思うんだ」 「えっ? ……あっ!」 「……ごめんなさい、先生」 「いいんだよ、気にするな」 「はい……」
見られてた 2008年04月12日 17時13分00秒 | B地点 おむ おむ:「カメラのお兄さん、どこ行っちゃったんだろ」 「……お兄さんのバックパック……うまいもの入ってるのかな」 ぐしゃ 「ああっ!?」 「つ、つぶしちゃった!」 きょろきょろ 「……誰も見てないよね」 「逃げよう……」 すたこら バックパック:「いや、おれ見てたから」
誰もが何かを大切に守っている 2008年04月12日 17時07分00秒 | B地点 おむ 「僕はこれを、守っているんです。」 「いったい中身は何だい?」 「よくわかりません。これを守っている自分に或る日、気付いたんです。」 「大切なものなのか?」 「だと思います。いえ、きっと大切なものです。」 「なぜ言い切れる? 中身を知らないくせに。」 「ただ信じてる……それだけなんです。疑いが兆す時もありますが……。でも、信じて守り続けるしか……。」 「内実がはっきりしないものなど、私には守れないね。大切だとも思えない。」 「あなたの言うことの方が正しいのかもしれませんが……。」 「羨ましいよ。皮肉ではなく、心から。老いて明日をも知れぬ身には、希望を信じることが難しいからね。守るよりも、守られるほうが、重要になるからね。」 「とにかく僕は、信じてこれを守り続けます。だから、どうか、どうか、あなたも、僕と一緒に。」 「……ありがとう。」
見てたのか 2008年04月12日 13時49分00秒 | B地点 おかか ぽかぽか 「くはー。暖かくて、気分がいいな。」 「踊っちゃおうかな。よっ。」 「はっ。」 「……ふぅ。あー最高だ。」 「ありゃっ、今の見てたのか?」 ガバッ 「な、何? やっぱり牙が欠けてますねだとっ!?」 「余計なお世話だ。」 「ちっ。嫌なこと思い出させおって。」
現実の夢と、夢の現実と 2008年04月12日 13時40分00秒 | B地点 おかか 私は夢を見たのだ 夢の中で私は花の蕾になった 同時に花の蕾が私になった 花の蕾になった私の体は次第に透き通り 日差しが私の体を貫いた 花となって揺れる私を私自身が見ていた そして私は夢から覚めることなく そのままずっと夢の現実を生きているのだ