釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

名ばかりの地方自治

2014-04-12 19:17:15 | 社会
今朝は3度で、日中は15度まで上がったが、風もありやや寒い日となった。雲も比較的多く流れ、日射しがしばしば遮られた。今、庭では山茱萸(さんしゅゆ)と蠟梅(ろうばい)が黄色い花を咲かせ、紅い椿が咲き乱れ、白い雪柳が風に揺れている。桃の花も咲き始めた。梅の花に似た杏も一気に咲いて来た。山芍薬や白根葵などの山野草も芽を伸ばして来ている。葉を出して来た紅葉の木に2羽のウソがやって来て、その小さな葉を啄んでいた。ヒヨドリも杏の花の蜜を吸いにやって来た。こうした光景を見ているだけで、植生が豊かであれば、小鳥たちも豊かに棲息出来ることが分かる。釜石の市街地を流れる甲子川にしても護岸工事が施されていても、砂州が生まれ、植物が育ち、自然の流れが一部で回復し、魚たちの環境が保持されている。19世紀までの日本、あるいは地方では20世紀半ばまで太古からほとんど変わらない自然環境が残されていた。しかし、戦後になり次々に道路が地方の隅々にまで整備され、世界で最も舗装道路の密度の高い国になった。これにより、移動が容易になるとともに自然環境も大きく変貌するようになる。震災後、復興と称して、沿岸部への自動車道工事が加速されることになった。釜石市街地を挟む南北の山裾ではそのための工事が急ピッチで行なわれている。土を満載したダンプがひっきりなしに行き交う。岩手は山が多いので、自動車道は一般道以上にトンネルが多くなる。沿岸部は新幹線や空港のある内陸に比べ、交通は不便だ。そのため、自動車道への期待は大きい。確かに交通が便利になれば、人の往来は活発になるだろう。しかし、便利さは必ず失うものを伴う。以前にも書いたが、地方の交通網の整備は地方の中のさらに地方での人口減をもたらす。人は地方の主要都市へ一層集中して住むようになる。そのため釜石のような沿岸部では人口の減少がますます加速されることになる可能性が強い。しかも、流出するのは若い世代が多くなる。震災前は釜石の高齢化率は37%であった。震災後の現在は40%に達しているのではないかと思う。自動車道が完成すれば、若い世代はさらに釜石を出て行くだろう。市は若い世代をつなぎ止めるために、これまでも他所からの企業誘致に力を入れて来た。しかし、企業は広く物流の活発な地域にしか進出しない。たとえ自動車道が整備されても、内陸に比べて釜石は、活用出来る面積が狭い上、主要交通網から外れている。仮に新たな企業が進出しても、現在進出したイオンタウンのように従業員を十分に集められないほど、釜石の労働人口が減少してしまっている。近隣の町村を加味してもである。釜石のような状況におかれている地方都市は全国にたくさんある。そして、こうした日本の地方都市の未来は決して明るくはない。日本は政治も経済もすべて中枢機能を東京に集中させて来た。オリンピックの誘致でますます東京は集中の度合いを強めるだろう。しかし、一国の繁栄は首都の繁栄で決るもではない。むしろ地方がどれだけ豊か、で決る。首都への機能の集中は効率の悪さを強めているだけである。経済的損失だけでもかなりのものだろう。にもかかわらず、こうした首都と地方、地方都市とその周辺の市町村との関係は是正されることなく、今日まで来ている。恐らくこれからもそれは変わらないだろう。地方の疲弊は今後も進んで行くことになる。少子高齢化は地方にこそ最も大きな打撃を与える。日本はこれまで地方に国が補助金を与える形で運営されて来た。国が大筋を決め、地方がそれに従う。しかし、国に各地方毎の事情など考慮することは期待出来ない。これまでの長い期間にわたって地方は国に頼る姿勢が出来上がってしまった。国が何とかしてくれると言う考えから脱却しなければ、地方は間違いなく衰退して行くだろう。そして、地方独自に、先ずは少子化をくい止めて行かなければならない。現在の家計は都会であれ、地方であれ、誰もが働かなければ生活ができない。結婚しても夫婦が共に働かなければならない。そのためには、生まれた子供を安心して預けられる環境の整備に力を入れなければならないだろう。年度末になれば国内の至る所で道路工事が行なわれている。予算を使い尽くさなければ、翌年予算が削られるからだ。そうして公費が一方で無駄に使われている。こうした悪弊がいつまで放置されるのだろう。公費の仕組みに手を加えればいくらでも少子化対策のための公費は捻出出来る。税の無駄遣いはこれまでも言われて来たが、まったく放置されたままで、安易な増税だけが行なわれている。地方の活性化は地方の自立なくしては決して得られない。草木や動物たちは山野で何者にも頼らず必死にその日を生きている。踏まれた雑草さえ、翌日には立ち戻っているのだ。
玄関先で咲いた杏の花

庭の雪柳

午後になり釜石市街地に入ったSL銀河 遠くに愛染山が見えていた