釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

山間の片栗の花

2014-04-06 19:15:16 | 自然
今朝は雲が流れていたが、青空も見えて、日が射していた。昨日ほどではないが、風もあった。庭の椿にヒヨドリがやって来て、蜜を吸っていた。近くから今日もカワラヒワの可愛い声も聞こえて来ていた。白いショウジョウバカマに続いて、紫のショウジョウバカマもついに開いて来た。山野草はほんとうに生命力があるとつくづく思う。昼前に昨日から考えていた、片栗の花が教えてもらったように、この時期に咲いているのか確認するために出かけた。最初は、沿岸沿いを45号線に入り、山田町に向かって北上した。岩手は広さでは北海道に次ぐ広さだが、7割は山地が占める。西の奥羽山脈と東の北上高地がそれぞれ南北に走る。北上高地は沿岸部までせり出しており、内陸方向は無論だが、沿岸部を走る道路にもトンネルがたくさんある。市街地の外れにある1,350mの鳥谷坂トンネルを抜けると、海岸にある水海公園へ向かう道が分かれる。そのあたりも国道を越えて津波が襲った。短いトンネルを2つ続けて抜けて、しばらく行くと両石の集落のあったところが見えてくる。海辺に沿っては走っていると、両石港に小さな漁船がたくさん並んでいる。以前来た時には見られなかった光景だ。しかし、集落のあったところは相変わらず、更地が広がったままだ。鵜住居地区へ出ても、やはり広く更地が広がったままになっている。大槌町、吉里吉里といずれも被災したところはほとんど更地である。震災のために砂浜がほとんどなくなった浪板海岸では5人のサーファーたちがボードを手にして、沖からやって来る波を待っていた。四十八坂を過ぎ、山田町の船越へ入る。ここには船越半島にある荒神社へ向かう別れ道がある。そのまましばらく行くと、左手に山田町の道の駅だ。山田町に入って気付いたのは、山田町には梅の木が多いことだ。あちこちで梅が咲いている。道の駅の店先を見てみたが、まだ花や山野草は並んでいなかった。店内を一通り見て、アカシアの蜂蜜だけを買って、来た道を引き返した。鵜住居地区で、山間を走る35号線に入る。すぐ左手に見える被災して取り壊された曹洞宗の常楽寺を見てみたが、まだ本堂は再建されていないように見えた。そのすぐそばの小高いところには被災を免れた小さな祠が見えた。この常楽寺は山裾にあり、そこにも以前は片栗の群落があった。35号線を走り、山間部に入って行くと、この地域でも梅が多いことに気付いた。ただ、梅の実を採るためか、ほとんどが白梅だ。道沿いに流れる鵜住居川もやはり雪解け水で、流れに勢いが付いていた。教えられた場所で、車を止めて、道沿いを下ってみたが、片栗の葉らしきものは見当たらない。道路脇に50cmほどの蛇が死んでいた。引き返して、車を止めた所より上を道沿いに歩き始めるとすぐに片栗の葉を見つけたが、花はまったく付いていない。さらにそのまま歩いていると、何と片栗の花がたくさん咲いていた。雪が舞っていたが、車に引き返して、カメラを取り出して、片栗の咲く所へ戻った。わずかの時間で雪がやみ、日射しも出て来た。東北の、しかも気温の低いはずの山間でこれほど早く片栗の花が咲くことに驚いた。釜石市街地の山裾に咲くものより、1ヶ月半は早い。辺りを見回すと、ここが日当りのいい場所であることが分かる。そばを車が何台も通り過ぎるが、薄紫の可憐な片栗の花に気付く人はいないようだ。一通り見て、さらに鵜住居川の上流にある橋野のどんぐり広場の産直に向かった。行ってみると、産直の建物は立て直しの途中になっていた。横にある「栗林ふるさと伝承館」で仮店舗が開設されていた。中は狭く、品物も少なかったが、土地の人が漬けた漬け物を買った。お店の人の話では本来なら先月に建替えが終わっているはずなのだが、入札が不調で、工事が遅れているのだそうだ。連休明けくらいになるだろうとの話だった。公共工事や復興事業で人手と建材の不足がこんなところにも出ているのだ。ゆっくり帰路につき、白梅を眺めながら車を走らせた。平地にもどって、よく見ると、毎年、春になると見事な桃源郷を醸し出していたところが駐車場になっていた。紅白の桃の木がすべて取り払われていた。道を隔てた向かい側の調剤薬局のためのもののようだ。この35号線沿いにはたくさんの仮設住宅があり、その住民のために開かれた薬局だ。しかし、あれほど見事な桃の花が切り倒されて、駐車場になってしまったことに哀しみさえ覚えてしまった。職場の隣の醤油工場の蠟梅の大木も駐車場のために切られた。いずれも木が大きくて、移し替えることが出来なかったのだろうが、とても残念だ。同じものが育つには何十年もかかるだろう。生活のために見事な花木が取り除かれてしまうことに無念さを感じる。家について間もなく、平地でもごくわずかの時間だが雪が降った。
山田町で咲いていた白梅

浪板海岸の蕗の薹(ふきのとう)

山の畦で見たツクシ

片栗の花がほんとうに咲いていた