時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

歳をとり小さくなる国、日本の近未来

2022年01月13日 | 午後のティールーム

日本の人口逆ピラミッド
縦軸:人口グループ
横軸:100万人
1980年、2020年、2060年(予測)



出所:人口社会保障研、THE WORLD AHEAD 2022 The Economist 


成人の日。久し振りに着飾った若者たちの集団に出会った。コロナ禍に鬱々とした日々を2年以上にわたって過ごして来た若い人たちが、しばしの開放感を楽しんでいる光景を見るのは、ホッとする思いがする。

年末から年始にかけて、世界の多くのメディアが新年、近未来についての予想を特集している。その中で、半世紀近くにわたって購読してきた雑誌のひとつ、The Economist誌の年末・年始の特集は、いつも楽しみにしてきた。しかし、この10年近く日本についての記事には考えさせられてきた。ひとつは、日本に向けられる関心度が顕著に低下していることだ。もうひとつは、世界でほとんど最高(正確には韓国に次ぐ)となったこの国の高齢化がもたらす活力低下の記事増加だ。この二つは相互に関連しているところがある。最近の記事を素材に少し記しておく。


SPECIAL REPORT: On the front line, The Economist, December 21st, 2021
Getting on THE WORLD AHEAD 2022:The Economist’ 2022


五城目町の場合
人口をテーマに取り上げた「古い国(歳とった国)」The old countryという小さな記事が掲載されている。ここでは、例として秋田県の五城目町、人口8307人くらい(2021年12月推定値)という小さな町が取り上げられている。500年近い歴史を持ち、500年近く続く朝市、城館跡、古民家集落など日本の原風景を今に残す魅力のある町である。しかし、コロナ禍の影響もあってか、観光客も少なく、住民数の減少が続いている。この町の人口は1990年以来、ほとんど半減、しかも住民の半数以上は65歳を越えている。そして、このイメージは日本の近未来と重なっている。


五城目町と全国の年齢別人口分布(2005年)五城目町の年齢・男女別人口分布(2005年)
■紫色 ― 五城目町
■緑色 ― 日本全国
■青色 ― 男性
■赤色 ― 女性
出所:Wikipedia 五城目町

縦軸:年齢グループ、横軸:人数
最上掲の日本全体とは年齢軸が逆になっていることにご注意
出所:五城目町HP


かつて The Economist誌は「信じられないほど小さくなる国」と題して、日本を特集した。人口減少が止まることなく進行している。反転の可能性はあるのだろうか。もしあるとすれば、いつのことで、何が反転の機運となりうるだろうか。筆者は幸いこの世にいないので心配することもないのだが、同様の記事を見るたびにやはり気になってしまう。

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N.B.
人口は年齢増加(長寿)と出生率の減少の二つの相乗結果である。2020年、日本の出生数は1899年いこう、史上最低の840,832人に過ぎなかった。他方、死亡数は1,372,648人で、自然増減数は531,816人で、これまでの最大の減少となる。自然増減率は4.3で数率共に14年連続減少、低下となった。
(厚生省人口動態統計月報年計概数)
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新成人を制度的に作り出しても、この実態はほとんど変わらない。2018年に制定された新制度で2022年4月から成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられる。これでおよそ200万人の新成人が一夜にして生まれることになる。これは成人の下限が1876年に定められて以来の制度改正になる。そして選挙権が2016年から20歳から18歳となった。

制度上で成人の範囲を拡大したところで、日本の高齢化の構造が変わるわけではない。日本ではすでに29%以上が65歳以上である。ちなみに、イタリアでは23%、アメリカ17%、イギリス19%となる。

日本のベビーブーマーの高齢化はとりわけ顕著だ。1947-49年生まれのコーホートのおよそ8百万人が来年には75歳以上になる。

日本では65-69歳のほとんど半分、70-74歳層の約3分の1が働いている。日本老年学会では65-74歳層は”pre-old”と呼ぶべきだと提唱している。しかし、75歳以上では構図が大きく変わる。仕事についているのは、10%と急減する。

こうした状況は、ほぼ既知のことであり、これまでもさまざまな対応がなされてきた。地域の例として挙げられた五城目町の場合も、ふるさと納税をはじめ、地域おこしの努力を行ってきた。しかし、コロナ禍が続く中で、リモートワークなど、地域の制約を解き放す変化も進行してはいるが、流出人口の抑制に有効なほどの変化は生まれていない。観光客の増加にも限度があり、人口減少、高齢化進行に歯止めをかけるほどの効果を生み出すことは、極めて難しい。

全国レヴェルで見ても外国人の受け入れ数は、産業維持に欠かせない数にまで達している。労働力不足に対応するために、さらに受け入れ増が必要になるが、解決すべき問題は増え、一筋縄ではゆかない。ロボットから税金をとる日は案外近いかもしれない。

追記(2022/01/15):
「スポチカラ:秋田ノーザン・ハピネッツ」NHK BS1 (2022年1月15日再放送)は、バスケットチームの力で地域再生を目指す、秋田県民の努力を興味深く提示している。




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