社長: 今回のA君の退職には正直驚いた。会社のナンバ-2として私の経営方針
を理解してくれていたはずなのに。A君とは共通の目標を持って経営に当た
ってきたつもりだ。給与も同業者に負けないくらい出してきた。一体何が不
満で辞めたのか・・・。
税理士:お気持ちはよくわかる。だが、「共通の目標」って一体何なのか。
給与を支払う者と支払われる者との間に、共通の目標があると考える
こと自体が幻想ではないか。
社長:それはわかっている。だが、会社が利益を出すことは社員の利益にもなるは
ずだ。会社の利益こそが共通の目標だと思うが。
税理士:そうとばかりも言えない。経営者は会社の利益を喜ぶが、
社員は同じ利益を見ても、「これだけ利益が出ていればもっと給与を
支払えるはずだ」と思うものだ。これは善悪の問題ではない。
双方の立場の違いだ。
社長: 先生の言うことはよくわかる。だが、これから社員との信頼関係をどうや
って築いていけば良いのか。今回のA君の退職では本当にまいった。先生の
ような考え方では社員からの信頼は得られないだろう。
私はいつも孤独だ・・・。
税理士:社員の信頼を得ることはできる。そのためには、
まず、経営者と社員の立場が根本的に違うということを認識すべき
だ。敢えて言うが、「社員が自分と同じ考えを持っている」
などいう幻想はすぐにでも捨てた方が良い。
その上で、経営者は社員との共通項を探していくことが大切だ。
立場の違いがわからなければ共通項を見つけることはできないからだ。
社長: それは観念論ではないか。では敢えて聞くが、先生はご自分の会社(事務
所)でその「共通項」を見つけることができたのか。
税理士:できている。私の事務所では、社員は資格を取り開業することが
目標だから、その目標を事務所の業務水準の上昇につなげていけばよい。
社員は実務経験を積むことができ、事務所は業務水準が上がる。
残業を極力減らすためのシステムも考えた。残業がなければ
社員は資格取得のための勉強時間を確保でき、事務所は残業代を負担しなく
てすむ。
これらは共通項になる。言い方を代えれば、利害が一致すると
いうことだ。だからこれは観念論ではない。労使が「共通の目標」を
持っているなどという考えの方がよっぽど観念論だ。
社長: うちは会計事務所ではない。うちの会社の「共通項」をどうやって探せ
ばよいか?
税理士:社長は業務経験30年の業界人だ。社長が駆け出しの頃、
何を考えていたかを思い出してみることがヒントになるのではないか。
私の「残業を減らすシステム」も私自身の駆け出しの頃の経験から
考えたものだ。
また、社員の話を定期的に聞く場を持つのも良いと思う。とにかく社員と
のコミュニケ-ションが大事だ。話をよく聞くことだ。
社長: わかったような気がする。「気がする」だけかもしれないが・・・。
A君は退職前の約半年間、私にほとんど話をしてこなくなった。
一方で、私は自分の経営理念をふりかざして、会社の利益目標を
論じるばかりだった。A君は聞いているだけだった。
たしかに、会社の利益というのは労使の共通項にはならないのかも
しれない。A君は個人的な問題を抱えていたから、
彼に必要だったものは経営理念でも会社の利益でもなかったのかも
しれない。
A君はいったい何を求めていたのか。辞めてしまった今、
もう知る術もないが・・・。
を理解してくれていたはずなのに。A君とは共通の目標を持って経営に当た
ってきたつもりだ。給与も同業者に負けないくらい出してきた。一体何が不
満で辞めたのか・・・。
税理士:お気持ちはよくわかる。だが、「共通の目標」って一体何なのか。
給与を支払う者と支払われる者との間に、共通の目標があると考える
こと自体が幻想ではないか。
社長:それはわかっている。だが、会社が利益を出すことは社員の利益にもなるは
ずだ。会社の利益こそが共通の目標だと思うが。
税理士:そうとばかりも言えない。経営者は会社の利益を喜ぶが、
社員は同じ利益を見ても、「これだけ利益が出ていればもっと給与を
支払えるはずだ」と思うものだ。これは善悪の問題ではない。
双方の立場の違いだ。
社長: 先生の言うことはよくわかる。だが、これから社員との信頼関係をどうや
って築いていけば良いのか。今回のA君の退職では本当にまいった。先生の
ような考え方では社員からの信頼は得られないだろう。
私はいつも孤独だ・・・。
税理士:社員の信頼を得ることはできる。そのためには、
まず、経営者と社員の立場が根本的に違うということを認識すべき
だ。敢えて言うが、「社員が自分と同じ考えを持っている」
などいう幻想はすぐにでも捨てた方が良い。
その上で、経営者は社員との共通項を探していくことが大切だ。
立場の違いがわからなければ共通項を見つけることはできないからだ。
社長: それは観念論ではないか。では敢えて聞くが、先生はご自分の会社(事務
所)でその「共通項」を見つけることができたのか。
税理士:できている。私の事務所では、社員は資格を取り開業することが
目標だから、その目標を事務所の業務水準の上昇につなげていけばよい。
社員は実務経験を積むことができ、事務所は業務水準が上がる。
残業を極力減らすためのシステムも考えた。残業がなければ
社員は資格取得のための勉強時間を確保でき、事務所は残業代を負担しなく
てすむ。
これらは共通項になる。言い方を代えれば、利害が一致すると
いうことだ。だからこれは観念論ではない。労使が「共通の目標」を
持っているなどという考えの方がよっぽど観念論だ。
社長: うちは会計事務所ではない。うちの会社の「共通項」をどうやって探せ
ばよいか?
税理士:社長は業務経験30年の業界人だ。社長が駆け出しの頃、
何を考えていたかを思い出してみることがヒントになるのではないか。
私の「残業を減らすシステム」も私自身の駆け出しの頃の経験から
考えたものだ。
また、社員の話を定期的に聞く場を持つのも良いと思う。とにかく社員と
のコミュニケ-ションが大事だ。話をよく聞くことだ。
社長: わかったような気がする。「気がする」だけかもしれないが・・・。
A君は退職前の約半年間、私にほとんど話をしてこなくなった。
一方で、私は自分の経営理念をふりかざして、会社の利益目標を
論じるばかりだった。A君は聞いているだけだった。
たしかに、会社の利益というのは労使の共通項にはならないのかも
しれない。A君は個人的な問題を抱えていたから、
彼に必要だったものは経営理念でも会社の利益でもなかったのかも
しれない。
A君はいったい何を求めていたのか。辞めてしまった今、
もう知る術もないが・・・。