一般社団法人 日本オオカミ協会主催のシンポジウム
「ドイツにみるオオカミとの共生」
おかげさまをもちまして盛況のうちに終了いたしました。
詳しい内容についてのレポートは後日ゆっくり・・と思っていますが、まずは個人的な感想を早く語りたくて。
それは、横綱 白鵬関のことです。
「蒼き狼」伝説の誇りを受け継ぐ草原の国モンゴルからやってきて、日本を第二のふるさとと呼び、こんな不祥事にゆれる今の時期に日本の伝統の頂点の誇りを立派に背負って守りぬいてくれている横綱。
その横綱がオオカミのことをどんなふうに語るのだろうかと、10月6日(木)夜の文京シビック小ホールで行なわれた対談にとりわけ注目していました。
・・・というか、正直なところ(横綱を全く存じ上げないので)このシンポに対する取材の多くはシンポの内容自体よりも横綱の動向を追いかけるスポーツ紙とかだったし、横綱は、もちろん言葉に不自由はないだろうけれどもやはり母国語で語るのとは勝手が違うだろうし、横綱自身が意図しないようなコメントへと誘導されたりとか、表現が不充分なため誤解されたりとかしないだろうか、横綱の不利益にはならないだろうか・・・と、老婆心でちょっぴりハラハラしていました。
ところが。それは全くの杞憂でした。(たいへん失礼な、というほどの杞憂でした)。
横綱は、オオカミが草原の生態系でどのような役割を果たしているかをきちんと理解しており、しかも、都会育ちながらご両親がモンゴルの伝統をしっかりと受け継がせるために子供の頃から【草原へ里帰り】をさせていたので、彼の体の中に草原が《ふるさと》として生きているのが、言葉の端々から伝わってきました。そういう方が語る言葉は説得力があります。ただの頭だけの知識でなく、身体からの、言葉。
その横綱が、彼にとってオオカミとはどんな存在か、草原の人々にとってはどんな存在か、を自分の言葉で語ってくれました。
その論理的な語り口、明るく真面目なものの考え方、なんて聡明な方だろうと感服しました。
さらに驚いたのは、日本とモンゴルの将来像、いわば《オオカミ交流》についても言及されたことです。
いまモンゴル国はどんどん発展はしているけれども、たとえば自然保護のような知識や学問はまだまだ遅れている。日本に学生を留学させたり、日本から教えに来てもらったりして、命のみなもとである自然を、草原を、守りたいと考えている。現在、経済発展のかげで草原が荒れ、オオカミも、まだたくさんいるけれども密猟されたりと減っている。もしかしたら、いつかいなくなってしまうかもしれない。そんな日が来てしまった時にモンゴルから日本に入れたオオカミが順調に増えていたら、それを今度はモンゴルに里帰りさせることができる。こんなふうに交流ができたら素晴らしいと思う。
・・という趣旨のことを、語ったんですね。
スポーツ紙などには、残念ながら字数の制限もあってこういう詳細までは載らない。
横綱の深い洞察力、国際感覚、先見の明には、心底舌を巻きました。
終了後に書かれた会場アンケートをひとつご紹介します。
【「日本とモンゴル、このふたつの国の架け橋になりたい。」
その横綱の言葉の重さを、私たち日本人はもう一度しっかりかみしめるべき】
それに尽きます。ハンパな知識で知ったかぶりをして、オオカミ再導入と聞けば反射的・感覚的に眉にツバをつける輩には、横綱の勉強熱心さと心の柔軟さを見習って欲しいと思いました。
日本とモンゴル。ふたつの国の「誇り」が体の裡に脈々と息づいているのが伝わってくる、本当に横綱の風格をもった方でした。ますます白鵬関のファンになりました