モラルの欠如・・・

　あれほど「食の安全」が叫ばれ、国民の目も厳しくなってきたのに、まだ懲りないのである。この夏だけでも、ウナギに飛騨牛、鶏肉、ふぐ、リンゴジュースなどの偽装が発覚し、挙句の果ては主食の米だ。カビ毒や基準値を超す残留農薬が検出されたコメを食用に不正に転売していたというのだが、なぜこのような食べられない米を輸入しなければならないのか。各国との取り決めで輸入せざるを得ないなら、物がものだけに、農水省は流通経路をきちんと把握すべきである。
　また、太田農相が、「人体に影響がないことが分かっているから、じたばた騒いでいない」というなら、その米を議員食堂で使い自分たちが食べてみればいい。また、刑務所など国民の税金でまかなっている公共の施設で消費してしまえばいいのだ。
　これらの会社のトップはもちろんだが、太田農相や農林省の役人たちのモラルはどうなっているのだろうか。なぜこの人たちはすぐに逮捕されないのか、なぜ農林省に責任はないのか、ニュースを見ていて腹が立って仕方ない。

　話は変わるが、大阪府の教育委員会に盗聴器を仕掛けた犯人は同僚だった。こんな教育者が子ども達を指導するのだから、モラルに欠けた若者や子ども達が多くなってもしかたあるまい。
　また、１１日のモーニングショーで放送された話だが、女子大生（２０）が８月１９日未明、ＪＲ相模原駅構内でコンセントに充電器を差し込み、携帯電話の充電をしていたという。女子大生は友人と待ち合わせをしていた間に充電していたようで、それを見た通行人が１１０番したという。たかだか電気０．０１５ワット時、電気代は３銭分であるというが、窃盗は窃盗だとして摘発されたのである。
　最初は、「みんながやっているので悪いことだとは思わなかった」と言っていたとか。厳重注意の上、通常の書類送検もしない「微罪処分」として処理したそうである。「みんながやっているから…」というのは昨今の若者の論理だろうが、女子大生のモラルはこんなものなのか。それにしても１１０番した人はどういう人なのか、よほど腹に据えかねたのであろうか。

　ところで今月３日に報道された、都営地下鉄駅で、駅員が女子高生（１７）に乱暴しようとして逮捕された事件だが、少女が、なぜ駅員に声をかけられておとなしくついて行ったのか不思議でならなかった。が、これには訳があったのである。
　女子高生が子供用の切符で改札を通り、それをとがめた駅員が休憩室に連れ込んだのがきっかけだったという。最初から乱暴目的で連れ込んだのではなかったらしく、どういう成り行きでこういうことになったのかはわからない。
　女子高生は「遊んでいて交通費まで使ってしまった」そうで、悪いことをしたという後ろめたさがあったから、素直について行ったのだろう。もっとも、それにつけ込んだ駅員の行為は卑劣きわまることで許されるものではないが、この女子高生がこんな不正をしなかったら起きなかったことだともいえる。おのれのモラルの欠如が思いがけない災いを招いたということだ。だが、大事にいたらなくて幸いだった。

　「みんながやっているから…」とか、「これくらいは許されるだろう」という甘い考えが、どんな大ごとになるかもしれない。次代を担う若者を育成する立場にある大人たちに、モラルとは何たるかをもう一度考えてなおしてもらいたい。