「とん ことり」の音がして

暮らしの中で 絵本と私

『 キップをなくして 』

2007-05-29 12:50:45 | 書籍・絵本


 『 キップをなくして 』

                       池澤夏樹  角川書店


     改札の前でキップをなくしたことに気付いたイタルは
     見知らぬ女の子から声をかけられる。
     
     「キップをなくしたら駅から出られないの これから駅の子になるのよ」
    
     キップをなくした子ども達はステーションキッズと呼ばれる「駅の子」と
     して東京駅で暮らす
     電車で通学する子ども達の安全を守る仕事をするために・・・

     ある日、「駅の子」のなかに列車に轢かれて死んだ子がいるとわかる。
     小学生のミンちゃん・・・。
     通学途中で電車にはねられたのだが天国に行く決心がつかず
     「駅の子」として留まっていた。
     イタルは死とは何かを考える。
     ミンちゃんが天国へ行く決心をするまでの旅に一緒に出かける・・・

     天国へ行く決心をしたミンちゃんにつきそい、「駅の子」が
     でかけた旅
     そこには<池澤夏樹さん>の死生観がよく描かれていると思う。
     人はすべて死すべきもの
     それでも生きることに意味があると。

     とても感動した一冊です。
     私は池澤夏樹さんの文章が大好きです。
     

     『 君が住む星』  池澤夏樹  
            photograph by ERNST HAAS 

      (心のガラス窓)より一部抜粋

     ぼくたちはみんなピカピカの傷一つないガラスを心の窓に
     嵌めて生まれてくる。
     それが大人になって、親から独立したり、仕事に就いたり
     出会いと別れを重ねたりしていくうちに、そのガラスに少しずつ
     傷がつく。時にはすごい硬い心の人がいて、そういう人が大急ぎで
     そばを走りぬけると、こっちの心にすり傷が残る。
     夜の空から隕石のかけらが降ってきてこころの窓にぶつかって
     はねかえることもある。
     少しずつ傷の跡が増えてゆく。
     でもね、本当は、傷のあるガラス越しに見た方が世界は
     美しく見えるんだよ。
     花の色は冴えるし、たった一本の草がキラキラ光ることもある。
     賢い老いた人たちがいつもあんなに愉快そうに笑っているのは
     たぶんそのためだろうとぼくは思う。
     歳をとるって、そういうことじゃないかな。
     だから元気をだして  <君の住む星より>

     ZARDの坂井さんの訃報、悲しいです。
     ご冥福をお祈りします。
     

    


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