ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

50. 強い文化を創ろう

2009-04-27 | 継続的改善52
何年か感じていることがある。
その危機はますます強くなるばかりで、変化の兆しが見えない。
国全体が狂気に向かって突き進んでいる。

かすかな希望は、このような危機感を感じている人がいて、変化が起きるだろうという漠然とした感覚である。
混沌とした暗いトンネルを抜け出し、パラダイムシフトが起きるためには、多くの人が危機感を共有化し、ビジョンに向かって一歩踏み出すことが大切である。

退化する日本の品質文化を総括すると、まず、高度成長の自信が、日本人を高慢にしたことである。
人をだめにするには、おだて続ければよい。
特におだてに弱い日本人は、それまでの、ひたむきな努力をやめ、バブル後遺症ともいえる経済成長というバブルの夢のなごりを目的とした生活に切り替えた。人が経済的安定を求めることは間違いではないが、経済格差の拡大は避けるべきである。

謙虚な日本人が高慢になり、経済格差が拡大する方向での、たてまえとしての品質が、品質文化をおかしくしている。

つぎに、ものづくり現場の欧米化である。
国際化の名の下に、なぜ、レベルを落とさなければならないのか、理解できない。
国際化とは、しっかりした文化を持ち、海外から尊敬される国になることで、国際貢献することではないのか。
従来の品質文化を捨て、なぜ国際標準に切り替えなければならないのか、理解に苦しむ。
しかも、レベルダウンというおまけ付きまで必要なのか。
国際化のための規格戦略の間違いである。

継続的改善活動という現場、現物、品質中心の活動を再構築することと思う。
ISOは製品実現プロセスを中心としたシステムである。
製品実現とはいかにも英文を翻訳した言葉だが、日本語に直すと「ものづくり」になる。日本には古くからものを大切にする文化があり、ものづくりの名人、職人芸を尊敬する気風があった。その点、設計と製造にはっきりした格差のある欧米の文化とは対照的である。その日本が欧米と圧倒的な力の差を見せ付けられたのは、戦争であり戦後の輸出製品に対する返品の山であった。

この現状を打破すべく産学協同で品質管理の研究に取組んだグループがあった。
戦後、壊滅的打撃をうけた日本が立ち直るためには「ものづくり」しかない。
もともと資源の少ない日本が戦争で資源を使い果たしたので、海外から原材料を輸入して製品に仕上げ海外に輸出する。クレームによる返品は最大のむだである。品質を良くしないと日本は生き残れないと考えた。その試みは、成功への確信より危機感のほうが強かった。品質管理を勉強するうちに危機感は希望に変化した。希望は情熱になり品質管理という活動となった。

当時JHQのスタッフとして来日していた統計学者のデミング博士に日参し講義を依頼した。日本人の情熱に動かされたデミング博士は講義の冒頭に全社で協力し品質をよくする活動の根底に「燃える情熱」がなければならないことを話した。日本人の情熱に動かされデミング博士の講義が続いた。講義には当時の多くの企業の技術者や経営者、学者などが参加した。用意された講義料をデミング博士は受け取ろうとしなかった。「日本の産業の発展に役立てて欲しい」という博士の友情を基金としてデミング賞がつくられた。

この講義に関係した不思議がある。
全社で協力して品質を作り上げる概念をデミング博士は恩師シューハート博士の考えをもとにデミング博士の哲学を加えてシューハートサイクルと名付けた。
その講義から多くの示唆を受けたある日本の学者がPDCAというサイクルとして、デミング博士の経営哲学を紹介した。いまいわれるPDCAである。当然のことデミングサイクルと名付けられた。これらの根底には国を超えた三人の学者の師弟関係と友情がある。

これが日本に品質文化の根底にあることを誇りに思う。
最近表面的な国際化と個人の利益を追求するあまり日本の品質文化が消えつつある。
日本の生き残る道はどこにあるのか少しの洞察力と想像力を働かせればわかることである。
コメント
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