仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

事件

2006年06月26日 | ムービー
『事件』(1978年/野村芳太郎監督)を見た。
殺人と死体遺棄の罪に問われた工員(19歳)の裁判を描いた物語で、被害者は犯人の義理の姉という事件だった。
今の時代はもっと凶悪な犯罪が連日のごとく起きていて、すでに現実社会は物語の殺人事件を凌駕していると思うのだが、原作が書かれた当時やこの映画が上映された当時は充分過ぎるほどに憂鬱な内容(人間模様)だったのかもしれない。
公判検事役は芦田伸介、弁護士役は丹波哲郎で、2人の名前が最初に紹介されることから一応彼等が主役ということになるのかもしれないが、他に存在感がある役者がこれでもかというくらいに出ていたので、2人の対立(対決)はかえって霞んで見えるほどだった。
これほど台詞が多い丹波哲郎も初めて見たが・・・。
(^_^;)
共演の渡瀬恒彦は、『仁義なき戦い』(1973年/深作欣二監督)の役柄同様に相変わらずチンピラ役がピッタリでこの上ない凶暴さを含んでいたし、大竹しのぶは、本当にしたたかな女の役が上手だと感じた。
また、佐分利信がキレ者の裁判長の役で出演していたが、公判検事と弁護士の互いの戦略に流されそうな状況を本筋に戻してくれる貴重な役柄で、「順調にいくといいがね」と、ぼそっと言った台詞や次々と明らかになる人間模様が『獄門島』(1977年/市川崑監督)の住職(了然和尚)役を思い起こさせたのだった。
この1970年代前半という時期は、なかなか良い日本映画が作られていた頃なのかもしれない。
これはおすすめできる日本映画だ。