二銭銅貨

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トスカ/ハーモニーホール2019

2019-09-14 | オペラ
トスカ/ハーモニーホール2019

作曲:プッチーニ、指揮:瀬山智博
演出:古川寛泰
舞台装置:鈴木俊朗
演奏:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
出演:トスカ:中村真紀、カヴァラドッシ:宮里直樹
   スカルピア:上江隼人、アンジェロッティ:妻屋秀和
   堂守:志村文彦

サンタンジェロの城壁の上部の凸凹が舞台上に配置されていて、これは1幕目2幕目では目立たないように工夫されている。1幕目では奥に水色の大きな柱のようなものが十字にセットされていて、横の柱がやや斜めにかしいでいる。その手前に小さな質素な祭壇がある。テーブルに白い布を掛けた程度のもの。トスカとカヴァラドッシが口論をしている最中に合唱団が次々とやって来て祭壇にお祈りをする。出番の少ない合唱団への配慮があったかも知れない。舞台上手に人の身長ほどのおそらく子供を抱いた白い聖母像がある。トスカは花束を持って登場し、この像にお供えする。下手にはカラバドッシが製作中の絵と階段のついた大きな製作台。テデウムは合唱団が出て来て勢揃いで歌う形式。スカルピアは中央前面で歌う。2幕目は、中央に書斎風のテーブルと長椅子を設置して、下手に骨組みだけのドアを置いた簡単なもの。上手のカーテンに白い格子状の模様をプロジェクターで映し出していた。3幕目の舞台装置はサンタンジェロの屋上。装置としては、この構築物しか作っていなくて、これを全幕通しで使っていたようだ。奥の壁面に大天使ミカエラとバチカンのシルエットがプロジェクターで映し出されている。セットとしては、小さな書き物の机がある程度。羊飼いの歌の場面ではジャラジャラと鈴の音が聞こえて来たような気がした。

visi darte visi damore の時は全体に照明が落ちて、トスカにスポットライトが淡くあたるような照明デザインを使っていた。歌の後半ではやや明るくなる。スカルピアの方もやや明るくなり、スカルピアはその俯いていた顔をやや上げて会場の方を無表情で見つめるようにしていた。歌は抑え気味の歌唱で、祈るような歌い方だった。拍手はここだけ。

スカルピアの死に方はリアルっぽい感じ。地味に断末魔を表現していた。死に方がいい。死に絶えたスカルピアのご遺体の前に蝋燭を2本、胸に十字架を置くシーンは型どおりだったけれども、良かった。どうしてトスカにあんなことをさせてしまったのかと悲しい気持ちになる。

中村は強いソプラノで声も美しく、ドスの効いた低い声も出る。芝居は堂々としてディーバらしい感じだった。赤のドレス。宮里は高い声が楽々と響き渡る気持ちのいいテノール。2つのアリアがとても短く感じた。この2つのアリアが終わった後は、即座に次に続けるようにしていたので拍手はなかった。カヴァラドッシの芝居も気持ちが入っていて良かった。愛と革命に燃えている。スカルピアは悪人だ。出刃包丁のような鈍い切れ味。さっぱりした感じではあるが、本当にファシズムっぽい悪がにじみ出ていた。でも、声は綺麗だし、良く通って安定している。妻屋はいい声を聴かせていた。体格が良いので舞台せましと走り回るのが印象に残った。志村の声も良い。綺麗で声量がある。芝居もいい。妻屋と志村のおかげで、この2役に結構出番があるし、見どころもあると分かった。ハイレベルな歌手陣のキャスティングはオーディションの結果らしい。普通の市民オペラでは考えられないレベルが揃った。

低予算で質素な舞台装置ではあったが、美しく迫力に満ちた演奏が十二分にカバーしていた。特に金管が安定していて良かった。美しい弦と木管と一緒にテデウムをはじめとするクライマックスを大きく美しく盛り上げた。

全体としてハイレベルな良いプロダクションになった。
19.09.01 ハーモニーホール

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