二銭銅貨

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マリア・ストゥアルダ/MET12-13舞台撮影

2016-09-03 | オペラ
マリア・ストゥアルダ/MET12-13舞台撮影

作曲:ドニゼッティ、指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー、衣裳:J.マクファーレン

出演:
マリア・ストゥアルダ(メアリー・ステュアート):
 ジョイス・ディドナート
エリザベッタ(エリザベス1世):
 エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー
ロベルト(ロバート・ダドリー):
 マシュー・ポレンザーニ
タルボット(タルボ卿):マシュー・ローズ
セシル:ジョシュア・ホプキンス

メゾのディドナートは高音も良く出る強い歌唱で、重いソプラノ役を思わせるような感じの長い歌のシーケンスを全力で歌いきった。ヒーヴァーも強いソプラノで高音が良く出る。ポレンザーニは端正な感じのテノール。

重唱、合唱、多重唱が良い。ほとんどの重唱が対決的な調子のもので、うっとりするようなものは少なく、唯一、ストゥアルダとロベルトの重唱が甘く溶け合う重唱だった。史実ではこんなことは無かったのだろうけれども、こんな重唱を聴いたらエリザベス1世もやきもちを焼く。

エリザベス1世は思慮深く聡明な感じながらも行動が粗野で粗削りな雰囲気で演出されていた。本物のエリザベス1世がどんなだったかは知らないけれども、英国っぽさが出ていて興味深かった。ストゥアルダの最後の衣裳は早替わり風に黒から赤に変わる。血の赤は死の意味なんだろうけれども、生の赤に感じる。スコットランド女王のメアリー・ステュアートは死んでいない。

ラストちょっと前のストゥアルダの静かな深く悲しい宗教的な響きの歌が美しい。葬送の曲のように思えて、人間の死とはどうあるべきかということに思いが至る。ディドナートの声を聴きながら、どう死ぬかということは、死ぬまでにどう生きるかということなんだと感じる。

16.08.11 東劇


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