二銭銅貨

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トスカ/東京文化会館(二期会)2017

2017-03-11 | オペラ
トスカ/東京文化会館(二期会)2017

作曲:プッチーニ、指揮: ダニエーレ・ルスティオーニ
演出:アレッサンドロ・タレヴィ
美術・衣裳:アドルフ・ホーエンシュタイン
演奏:東京都交響楽団
出演:トスカ:木下美穂子、カヴァラドッシ:樋口達哉
   スカルピア:今井俊輔

Va, Tosca.... Va, Tosca....
ゆっくりうねるように、
スカルピアの声に合わせて
テデウムが始まる。
ゆっくりうねるように、
重層する声の中に、
陰惨な思想がはびこり、増殖し、拡散していく。
宗教的なきらびやかな色彩の中に
冷酷さが姿を現し、また隠れる。
スカルピアの声、スカルピアの声、スカルピアの声。

トスカはテーブルにあるナイフを目にする。
一瞬、目が輝き、顔色が変化。
首を振って、スカルピアをチェック。
ほんの一瞬の出来事だった。
顔が青白く光った。
スカルピアの冷酷の反射か?
神の啓示か、
悪魔のささやきか。
一瞬の出来事は数学的に証明可能な必然だったのかも知れない。

舞台天井近くの聖ミカエラ、
剣を手に舞台を厳しい目で見下ろしている。
舞台奥、遠くにぼんやりと浮かぶサンピエトロ大聖堂。
たどたどしい羊飼いの歌、
少年少女合唱団のメンバーの声に指揮者の目がしばしなごむ。
暫くは未明の緩やかな時間。

カヴァラドッシ亡き跡、
サンタンジェロの屋上。
知盛のように身を投げて終わるトスカ。

O Scarpia, avanti a Dio!

vissi darte vissi damoreは気迫に満ちていた。最後は本当に怒りが爆発するような雰囲気で、この歌の時点でスカルピアを刺し殺すような殺気があった。星は光りぬは暗い雰囲気ではなく詩的な雰囲気で始まった。死を前にしても詩的なカヴァラドッシは芸術家だ。今井は紳士然としたスカルピアで声が美しく良く通り、それ故にスカルピアの本質的な陰険さが際立った。芝居も歌も良かった。

演出と美術は徹底してクラシック。わかりやすいし本当にトスカの世界に入り込める。美術はだまし絵だらけの本格的なもので各サイトの内部を本物っぽく再現したものだった。うねるような演奏は元気良く、トスカの身をよじるような気持ち、カヴァラドッシの燃え上がる情熱、スカルピアの重厚な冷酷を表現していた。プッチーニだ。

スカルピアは本当に悪い奴だ。登場の時の悪党気分満載の音楽、王党派がナポレオン軍に負けた知らせを聞いた時のカヴァラドッシの叫び"Vittoria Vittoria"、2幕目最後のトスカのセリフ「この男のために、ローマ中が震え上がっていた」など、スカルピアの独裁に対する怒りが炸裂するオペラだった。

ただの恋愛悲劇じゃない。

ローマ歌劇場のプロダクション
17.02.18 東京文化会館

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