二銭銅貨

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ランメルモールのルチア/MET08-09舞台撮影

2009-03-12 | オペラ
ランメルモールのルチア/MET08-09舞台撮影

作曲:ドニゼッティ、演出:メアリー・ジマーマン
指揮:マルコ・アルミリアート
出演:アンナ・ネトレプコ、ピョートル・ベチャワ
 マリウーシュ・クヴィエチェン、イルダール・アブドラザコフ

ヴィラゾンが不調のため、ベチャワが代役。

最後まで、ずーっと迫力のある音楽が続いていて、ゆっくりした所がないのは登場人物の1人であるルチアの兄さんの性格なのか、それともドニゼッティの性格なのだろうか。ずっと緊張しっぱなしの感じで、くたびれた。

でも、1幕目終わり頃のルチアとエドガルドのワルツ風の歌曲はゆったりしていて良い。濃い暗い青みがかった暗闇から、ややセピアっぽい夜明け前を思わせる優しい照明に変わっている。ここが唯一、柔らかで愛らしいパートだと思った。

兄さん役のマリウーシュ・クヴィエチェンはマジで怖い。この兄とルチアの2幕目の兄弟げんかが面白い。ドスの効いた声で、ほえあっている。歌と言うよりおどし合い。迫力がある。兄と妹の喧嘩っていうのは、こういう風だ。上が兄の場合の妹ってのが強くなるのが分かる。ルチアの性格の強さが感じられる。

インタビューで、去年これをやったらしいインタビューワーのデセイも、ネトレプコも、確か、この2幕目が好きだと言っていた。2人とも気が強いんだろうな。

2幕目のラストのルチアは真っ赤な衣装。他の群集はねずみ色系統の色合いで、ルチアが1人だけ目だっている。そのルチアが、幕がサッと落ちる時に1人だけ幕のこちら側に残されて、それでサーッと照明が落ちる。ルチアの孤独感、焦燥感。

3幕目の狂乱の場はルチアの独壇場。狂気の表現。フルートとの二重奏が印象的で、なかなか、これを合わせるは難しそうだと思った。

最後はエドガルドのベチャワがアリアを熱唱しながらこと切れる。幽霊になったネトレプコの手を握り締めながら。

もっとも幽霊になったネトレプコは、ベチャワが剣を腹にあてがってためらっているのを、その剣の握りの先に手をやってグイと押していた。幽霊になっても気の強さが出ている。

1幕目の途中でハープの演奏があり、東洋系の女性の奏者のクローズアップがあった。日本人のハープ奏者で安楽真理子という人がMETに所属しているらしいのでその人かも知れない。

重厚で深みのある美術、落ち着いた色合いの照明が良い。ちょっとお茶目な所もあるが演出も良かった。3幕目の狂乱の場の後に出て来る大きな月は実物の模写のようなデザインで、何か地上でのこの茶番劇をねめつけているようにも感じた。

それにしてもルチアは本当に可哀相だ。

09.03.06 東劇

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