猿八座が稽古場としてお借りしている「心萃房(しんすいぼう)」は新発田市(旧紫雲寺町)東光寺の境内にあります。この辺りには冬の風と砂を防ぐ立派な松林が拡がっています。江戸時代から地元の人々が育ててきた美林を後世に伝える為、毎年イベントが開かれていますが、地元の音楽家とともに、昨年から猿八座も出演させて頂いています。
6月12日(日)、今年は薩摩若太夫さんの語りで近松門左衛門の「嫗(こもち)山姥」廓噺の段。薩摩座による江戸写し絵の上演も予定されています。プログラムの詳細は決まっていませんが、地元の皆さんが販売する美味しいものはいつも開店後すぐに売り切れてしまいます。開始時間は9:30、早めにお出かけ下さい。
6月1日、何と2011年初のブログ更新となってしまいました。
1月、2月と新発田の稽古場で「信太妻」の稽古を続け、3月11日、新潟へ向かうフェリーの船内放送で地震発生を知りました。4年前の中越沖地震のときも船上にいて、全く揺れは感じませんでした。報道で次第に明らかになる被害の甚大さを気に掛けながら3日間の稽古を終え、15日、新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)の初日から二日間は公演を打てたものの、最後の17日は停電が計画されて中止、このあと19日,20日は八王子でも公演の予定がありましたがこれも中止となりました。
震災と、未だに終息しない原発事故の被災者の皆様におかけ出来る言葉は見つかりませんが、4月10日新潟県阿賀野市の「環翠楼」で開かれた公演についてご報告します。環翠楼は五頭温泉郷の旅館で、美しい森と庭園の中に明治・大正の建物が配置されています。震災前から女将さんがご贔屓のお客様に参加を呼びかけて下さいましたが、震災後に申込まれたあるお客様に公演自粛の可能性もあるとお伝えしたところ、こんな時にこそ是非やって下さいと励まされたとのこと。詳しくは環翠楼の若女将さんのブログをご覧下さい。http://kansuirou.blog60.fc2.com/blog-date-201103.html
定員を超える70名のお客様に御覧いただいたことで、どんな状況下でも舞台が果たせる役割があるのだと、確信することが出来ました。
環翠楼公演 「小栗判官」照手車曳きの段 説経節の会・保戸塚 時久さん撮影
写真の通り、環翠楼公演の語りは越後角太夫さんに代わり、急遽、八王子在住の薩摩若太夫さん(東京都指定無形文化財「薩摩派説経節」の十三代目家元)、相三味線は京屋惹さんが勤めました。角太夫さんは謂わば間接的に震災の影響を強く受け、しばらく舞台に立てなくなりました(現在は健康上の問題は全くありません)。唯一の太夫を失った「越後猿八座」は解散し、残った遣い手は「猿八座」座員として活動を続けることになりました。9月には愛知県で「信太妻」の公演がありますが、これも若太夫さんが床を勤めます。「猿八座」のあらたな出発です。
薩摩若太夫さんのホームページ http://www6.ocn.ne.jp/~sekkyo/satumatop.htm