肉魔神

野球と本の備忘録

「ビタミンF」(重松清著)

2005年06月06日 22時38分00秒 | 
久しぶりに小説を買った。直木賞を取った時からタイトルが気になっていた。そして著者が西原理恵子の本や新聞、雑誌に寄稿するたびに、いい意味で売文家らしいスノッブさを醸し出してるなと感じていた。元は週刊誌がホームグラウンドらしく、テーマは重厚でもキャッチーで軽妙で高尚じゃない文体やリズムが、好みだ。

先に本以外のところで注目して読んだ直木賞受賞作だが、面白かった。短編集だが、一晩で読み切った。「ビタミンF」というタイトル作はない。Father、FamilyなどFの頭文字がつく単語が、全編の共通テーマとなっている。しかも主人公はすべて30代男で感情移入できた。

どの話も味があって良かったが、学校でシカトされる娘の話(タイトルは忘れた)が、プレステ2のガンダムジェネレーションNEOをやらずに済むくらい引き込まれた。

よくできた娘が学校でさしたる理由もなく、あえて言えば「目立つ」という理由で無視される。でも、子供にもプライドがあって親や学校には相談できない。そこで、娘は「自分に性格が似ている『せっちゃん』」という空想の人物を作り、せっちゃんが学校で無視されているという話を家族にする。

親は体育祭で娘が一人だけ創作ダンスを踊れず、友人と弁当を一緒に食べていないという状況を見てから初めて、創作話であることに気づく。せっちゃんが娘自身を投影した存在であることにも。

小学校6年のころ、同じような経験をした。数人のグループで順番にシカトすること、されることがあった。私の番も当然あった。よく覚えてないけど、それぞれ数週間~数カ月だろうか。とても辛かった。軽い円形脱毛症にもなった。担任の教師が、それをからかい余計に腹が立ったことも思い出す。あれから基本的に教師不信だ。でも、人に対して逆に辛いことをしていたんだな、と気がついた経験でもある。でも、この経験があったから大人になれた気がする。それから、人に対して多少だけど寛容になれたと思う。

今でも学校にいじめはあるだろう。この本でも教材にすれば、多少はマシになるんじゃないか。

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3 コメント

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過去コーチ (南海)
2005-06-07 06:58:49
肉魔神氏にそんな過去があったとは。加古コーチもびっくりです。しかし、現在はいじめとかもさらに陰湿になってんのかなあ。

今になって思うことは、教師だって公務員だから、そりゃあ公務員なんかにロクな奴はいねえだろ、とゆーことです。
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いじめ、かっこ悪い (ジューシージャンボ)
2005-06-07 09:10:19
いじめかあ。肉魔神さんにもそんな過去があったんだね。小学生くらいって、そのへんの罪の意識はないからなあ。でもそれでも真っ当な!?大人になってよかったですね。



俺も、小学生時分に先生の心無い一言に傷つけられた事があります。やれ宿題忘れたとか、教科書忘れたとか、ハンカチ忘れたとか・・・。あ、これは違うか。
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忘れ物カードを忘れたことを忘れないようにと言ったことを忘れないようにしますと思ったことを忘れそう (南海)
2005-06-08 23:40:44
二人とも、忘れ物カードを忘れたことを忘れないようにしないといけませんね。私も二人に忘れ物カードを忘れたことを忘れないようにしないと言ったことを忘れないようにします。
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