日曜絵かきの散歩道 “doucement,doucement”

日曜絵かきは楽しくて孤独 青空に誘われてつい散歩に
“ドゥスモン、ドゥスモン(ゆっくり、ゆっくり)”

ナミダアメ/最後の日

2017年03月31日 | travail
そしてやって来た最後の日
午後から涙雨になった

♪辛い別れに泪雨
♪胸がしぐれて雨になる
♪胸がしぐれて雨になる



あと少し残っていた資料のファイルを
相方に譲る物の他は
すべて処分した
最後に処分したのは
日々付けていた覚え書きのファイルで
私の7年半が詰まっていた

昼休み
休憩室の小さなテーブルの上は
異動する人と退職する人が
持って来た菓子でいっぱいになった

最初は食べるものかと思った
静かなる暴君の持って来た菓子を
苦々しい気持ちで勢いよくかじると
意外においしくて笑ってしまった



夕方
時間が来て
首輪をはずされ
野に放たれた

今までこの職場から
何人もの人を送り出してきて
いざ自分が去る時には
送別会もなかった
やりましょうという声への回答は
できない だったらしい
静かなる暴君のイケズな計らいか
自分が采配を振って切ったんだから
できなくて当然か

静かなる暴君は
通常の異動の範囲外から
期間限定でやって来た人だった
本来は当たらないはずの人だった
不運だった

その人の下でなければ
その人が采配を振ったのでなければ
結果は違っていただろう
結果が同じだったとしても
もっと納得できただろう



あまりに寂しく無念な気持ちを
最後に文章にして
総務の人に送ってみたが
あたりさわりのない
さらりとした返答があっただけだった

所詮非正規なんて
最後は捨て犬同然
退職金もない
犬だって捨てられる時は
段ボールに餌を入れてもらうのに


(ワタシ鬼でもなければ犬でもありませんよ)

文章を送る前に
相方に読んでもらったら
相方はその文章が欲しいと言った
くじけそうになった時に読んで
私の分もがんばるからと



少しずつ持ち帰ったはずの私物が
最終日にもまだたくさん出て
相方の車で家まで送ってもらった

相方の家とは正反対の方向で
近くもないのに
忙しい時間を割いてくれたことが
もらったプレゼント以上にうれしかった

雨は降り続けていたけど
雨あがりに虹がかかったような
幸せな気持ちになれた

新年度から
初めて賞与が出るようになる予定だった
月単位で制限されていた出勤日数が
年単位での平均を取るようになり
待遇が改善される予定だった
その直前に
長年貢献してきた者を
無下に切り捨てた

この無念は
この後も何度もぶり返して
私を苦しめるだろう
そんな時は
今日のこの幸せな気持ちを思い出して
がんばろうと思う




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