「長期の海外出張から帰国した同僚(大手商社)は、そのまま赤坂の料亭の接待に向かい、その場で倒れた。通夜で奥さんにお悔やみの言葉をかけると『夫は仕事と結婚していたのです』と。この言葉を聞いて私は人生の大事なことを何か忘れているな、とわれに返りました」(2004.09.25掲載)
深野典之さん(57)は、亡くなった同僚と同じようにひたすら仕事に走るモーレツ社員だった。時代はバブル前夜。
「能率と利潤を追求するいたずらに忙しい人たちばかりで、ともすれば家族の心の叫びや人の訴えに耳を傾けるゆとりはありませんでした。話し相手のない人は取り残され、ひとりぼっちで孤独な倦怠を抱えていたはずです。だからこそ心の支えの、よき聞き手になろうと考えたのです」
以来、メンタルケアのスペシャリストになろうと一念発起。養成講座に通い、人間論、家族論、心理医学などの基礎と実績を勉強し、選考試験を受けて資格を取った。試験は無資格でも受験できるが、合格率は15%(平均)という難関だった。
「最初は老人ホームなどでの対話が多かった。最近はひきこもりの青少年から対話してほしいと派遣を求めてくるケースも多くなっています。また、うつ、神経症、パニック症候群、自殺未遂など、自分の悩みや居場所を作ってほしい、聞いてほしいという人たちも多くいます。引きこもりの男性は、女性の精神対話士との接触を求めてきもします。男性が怖いのです。私たちの仕事はひたすらこうした人たちの話を聞いてあげることなのです」
対話は1クール80分、毎回リポートを提出する。本部には精神科の医師や臨床心理士などがいるので、専門的なアドバイスを受けられるバックアップ体制ができている。現在、精神対話士は全国で500人余り。毎日、患者の心のすき間を埋めるべく、頑張っているという。
「人間は高齢になるに従い体力的に喪失するものが多くなってきます。その寂しさや心細さは家族でさえ理解できないこともあります。それを温かい心と専門的な知識で和らげ、これからの人生について生きがいを持ち、よりよい生活を送れるように精神的な支援をすることが仕事、私はとても好きです」
クライアントは小学生から90歳の高齢者までと幅広い。だから「知識だけでなく人格も大切。自分自身の人格を向上させる努力もしていきたい」と深野さん。
精神対話士の派遣料金は1カ月2万5000円、対話回数は4回で1回当たり80分が基本で、自分の取り分は2万5000÷4回=6250円(単価)のうち4000円。5人と対話すると月8万ほどの収入になる。
(夕刊フジより引用)
出版社/著者からの内容紹介
科学技術や情報技術の著しい進歩によって、現代社会は物質的に
は豊かになりましたが、反面、心の豊かさが取り残されているのではないでしょ
うか。人間関係の希薄化がもたらす孤独感や不安感、喪失感などを訴える人がま
すますふえています。
現代人の15人に1人がうつに陥る傾向があるといわれています。また、同時に心
の荒廃が大きな社会問題となるような世の中にあっては、「心の手入れ」をする
ことが必要とされているのです。それは、自分の生きがいをはっきりと認識させ
てくれるような存在を求めるということでもあります。そんな暖かな存在があっ
たら、自らの生きる意欲につながっていくのです。
そうした社会の要請の中から生まれたのが「精神対話士」という存在です。医療
行為、精神療法を用いることなく、あくまで対等な立場で、会話(対話)を通し
て人の心のケアを行うメンタルケアのスペシャリストです。
1993年に誕生して以来十数年間、いじめに苦しみ心を閉ざした子ども、家庭の問
題が原因で話すことをやめてしまった少女、社会的なかかわりを持てなくなって
しまった「ひきこもり」の少年、仕事や職場の人間関係に行きづまった会社員、
終末医療を受け静かに死を待つ人たち、認知症の高齢者、統合失調症で悩む人た
ち……数多くの人々と対話し、実績を上げてきました。
本書では、その精神対話士の「対話」の本質をわかりやすく解説しています。お
読みいただければ、現代社会で忘れられがちな「対話」の素晴らしさに気づかれ
るでしょう。人の話を「聴く」という行為が偉大な力を持っていることに、きっ
と驚かれることでしょう。
内容(「BOOK」データベースより)
一九九三年に精神対話士が生まれて以来、ネガティブな精神状態に陥ったさまざまな人たちとの対話を通して、再び元気を取り戻していただくことに成果をあげてきました。本書では、その精神対話士の「対話」の本質をわかりやすく解説しています。お読みいただければ、現代社会で忘れられがちな「対話」の素晴らしさに気づかれることでしょう。また、人の話を「聴く」という行為が偉大な力を持っていることに驚かれるでしょう。
精神対話士・・・いろいろ調べて出てきた職業。臨床心理士、精神保健福祉士も調べたが、スクーリングと呼ばれる「学校に通う」という事が必ず必要。学費もバカにならない。現在、模索中。
こんな本も↓
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対人関係を良好に保つための手段として、臨床心理士として活躍する著者がカウンセリングで重要視される「聞く」技術を一般向けに紹介しているところが特徴的。対人関係に悩む人はもとより、営業職など、より良い人間関係を築きたい人に向いている。
ここでいう「聞く」とは、ただ耳を傾けるだけではない。「聞く」には理解が必要であり、「話す」より膨大な努力を要すると著者は語る。実際のカウンセリングでの会話を掲載し、読者に対し「さて、あなたならどう答えますか?」と尋ね、読み進めながら読者自身が自分の反応や態度を考え、それをより良い「聞く」態度に修正するという方法で、対人関係における自己鍛錬の場を提供している。
また、いかに井戸端会議での会話が洗練された「聞く」技術と良好な人間関係を保つことに長けているかを良い例として取り上げた。専門家から見た「話す-聞く」相互関係とその技術を、我々が思い浮かべやすい生活場面を想定し、楽しみながら学べる気軽さがある。
訓練を進めるうちに、相手が話すことに対してどれだけ我々が「聞く」耳を持たないか、また、そのことで過去の人間関係が崩壊した可能性も否めず、「眼からうろこ」状態を体験するかもしれない。一般向けに書かれているため、専門用語はほとんど使われていない。しかし、全31章の「聞く」技術に関する講義と訓練の場は、「臨床心理士だったらこうする」という反応や態度も示され、臨床心理士の卵にとっても価値ある1冊だと言える。(青山浩子)
出版社/著者からの内容紹介
「沈黙は金、雄弁は銀」「一度語る前に二度聞け」など、昔からしゃべることよりも聞くことの大切さが強調される。もちろん「話す」ことも人間関係の上で大きな影響を与えるが、本当に人の話を「聞く」ことができると、人間関係は驚くほどよくなる。 本書は、「聞く」ことのプロであるカウンセラーが、「聞き上手」になるための極意を、実例をふくめてわかりやすく説いた1冊。









