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アフリカ連合は変われるか?〜AU改革のための特別総会

2018-11-21 07:30:00 | アフリカ情勢
11月17日、18日の二日間、アフリカ連合(AU)は第11回目となる首脳会議臨時セッションを招集した。この特別セッションの最重要テーマは、「AU改革」そのものに置かれた。首脳会議で正面からAU改革が議論されるのは、これが初めてだそうだ。

(Jeune Afriqueウェブサイトより)


AU総会の話なんて、なにか面白いの?などというお咎めも聞こえてきそう。しかしアフリカの歴史に照らせば、実は非常に深い問題をはらんでいる。そんなことをこの記事ではお伝えしてみたいと思う。


ところで今回の臨時総会では、AUのどんな点が変わるのだろうか。主要な論点をピックアップしてみよう。

◆委員会組織の改革
AU組織は、国家元首級会議を頂点とする、主権国家代表による総会組織と、AUの事務、政策執行を司る委員会組織からなる。今回の改革では、特に委員会組織の機能と権限を強化し、より独立性、効率性を追求するところに狙いがある。今後、委員長、副委員長には、政策実行と予算執行の件が案が与えられ、「成果追求型」の組織に改革することが目指されている。

またメンバーの選定にも大きな変更が加えられる。現在、委員長以下10人の委員を擁する理事会。これを委員長、副委員長と、6人の理事、計8人に絞る。そしてジェンダー比率を厳密に適用する。女性が委員長なら副委員長は男性、その逆も同様。6人の理事も男女同数とする。そして大陸の5つの地域、つまり北、東、南、西、中部それぞれから漏れなく選定することも条件としている。

上記8名の理事会メンバーは、国家代表たる地位ではなく、個人として選定されることとなる。委員長選挙はこれまでどおり、各サブリージョンごとに候補者を擁立し、最後は総会で55の国家元首の投票によって決定される。しかし候補者の情報は広くネットで提供され、各国の国営放送で政見放送、政治討論なども放映される。

◆総会
現在、1月、7月の年2回開催されている元首級による総会も、年1回に変更され、このかわりに大臣レベルでの評議会、サブリージョン組織(RECs)による調整会議にてフォローが行われることとしている。

◆「AU開発庁」の創設。
現在、アフリカ諸国による開発イニシアティブをとっているのは、「アフリカ開発新パートナーシップ」(Nouveau Partenariat pour le Développement de l'Afrique: NEPAD)である。この組織を、「アフリカ連合開発庁」(Agence de Développement de l'Union africaine)に強化しようという動きがある。AU権限と政策実施能力の強化、財政の一体化などが狙いだ。今次臨時総会では、新組織のマンデートについて議論が行われた。

このイニシアティブは、「アフリカの統一を、アフリカのイニシアティブで達成する」というAUそのものの存在意義に深く関係する。新組織は、開発を通じて経済、インフラ、交流・物流などにおける地域統合を図り、ひいてはアフリカの統一を実現しようとするAUが描くシナリオにおいて、極めて重要な役割を果たすものとなる。


◆財政改革と未払い国への「制裁」
このような改革を行う一つの背景に、財政状況の改善が挙げられる。AUの財政状況については想像にかたくなく、極めて厳しい状況が続いている。AU予算の6〜8割は対外援助に頼っている。そして独自財源についても十分確保できていない。分担金を払わない国が絶えないからだ。現在、わずか半分程度の額しか収められていないという。このことがAUによるアクションを阻んでいるもう一つの大きな障害だ。

今回の改革で最重要な点は歳出の抑制である。上記のような、理事定数の削減、総会の年1回開催への移行などは、歳出を抑制する大きな方策である。

他方、歳入の改革はもっと差し迫っている。2016年のキガリ総会では、加盟各国が、リストに定められる24の製品の輸入に際し、評価額の0.2%を課税し、それをAUに分担金として納める措置を決定した。取りっぱぐれがないようにするためである。

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しかし事態はそんなに簡単ではない。法整備、徴税システムの整備、課税の行政実務など、相応の準備が必要だ。また米国など域外国からは非対称的な課税に対する反発も呈されている。

そこで今回の改革でいよいよ踏み込まれたのは、未払い国への「制裁」である。総会における国家元首スピーチが、すべての議事が終了しない限り認められなくなることなどが含まれている。他方、ペナルティは段階的に適用されていくことが検討されている。「ブラックリスト」のアップデートは2019年2月10日〜12日のアジスアベバでの総会に行われることとなっている。

◆なぜいま、AU改革か。
なぜこのような時期に、臨時セッションまで開いてAU改革を議論する必要があるのか。・・・それはAUが目指した「アフリカの統一」の崇高な目的と、実体の乖離が激しいことが根本にある。AUは国家元首が集まる総会で、「アフリカ」としてのアクションを決定する。その実施が委員会組織に任される。

しかし委員会組織には、その力を行使する法的執行力が十分備わっていない。また委員長が予算を決定し、執行を決議していく権限も十分に与えられていない。重要なアフリカとしてのアクションを決定するとことまではいいが、肝心のAUがそれを執行する力が、権限として、機能として、またステイタスとして備わっていない。このため、総会で国家元首たちが決めたアクションのうち、わずか10パーセント程度しか実行に移されていないのが現状だ。

AU委員会の委員長を務めるチャド人、ムッサ・ファキ・マハマ氏は、今回の特別セッションが「満足のいく成果を収めた」と述べ、「EUでもなし得ていない組織改革に着手する意義」を強調、相応の成果を強調する。しかし実際の総会での議論は少し冷めたものであったようだ。AUの加盟国は55。しかしこの総会に集まった国家元首は半数に満たず、その他の代表団参加国と合わせても22しか集まらなかったという。



しかし今年で設立から55年を迎えるAU。崇高な理想と直面する現実のギャップは大きい。こう行ったことから、特に財政問題と執行能力の面で、AU改革は急務とされ、今次の臨時セッションが召集された。他方、アフリカの各主権国家のレベルでは、その重要性があまり認識されていないようにも映る。現在の改革は2021年から適用される様子。

ではAUはアフリカ統一の悲願の原動力となりうるのだろうか。すくなくとも、その目標鬼向け、組織の改革が今後進んでいくことだけは確実のようだ。

(おわり)


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