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突然の大臣解任のなぜ?〜コートジボワール政局を読む

2018-12-12 09:20:00 | アフリカ情勢
12月10日(月)昼前、当地コートジボワールにフラッシュニュースが流れた。石油・エネルギー・再生可能エネルギー大臣の交代を伝えるものだった。

(RFIウェブサイトより)


それまでポストを務めたティエリー・タノ大臣(56)。米国ハーバード大学に学び、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)でキャリアを積んだ。仏語圏出身として初の副長官を務めたのち、アフリカ資本のECOBANK頭取に。2014年からコートジボワール政府大統領府の大臣級ポストを務め、2017年1月の政府再編で現職に抜擢された。明晰な銀行家にして実力派。仕事の手腕と、実務能力を買われての人事。ビジネス感覚と明晰な判断から、官民にわたる多方面の信頼が厚い閣僚と捉えられていた。


実は解任劇の当日朝、ンボテは同大臣と同じ会議、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)が主催する石油・資源フォーラムに出席していた。報道によれば、タノ大臣はこの席上、自らの解任のメッセージを受け取ったという。会場を去る際、きわめて厳しい表情を浮かべていたことが印象に残る。

(同日朝に行われた西アフリカ石油・地下資源フォーラム開会式)


この解任劇にはいろいろ疑問が残る。第一に、タノ大臣だけが解任されたこと。第二に、解任速報ののち、なにごともなかったかのように後任、アブドゥラマン・シセ大臣への引き継ぎ会見が組まれていたこと。第三に、本件が「辞任」か、「更迭」か。メディアや識者の見方が分かれていることである。

しかしなぜ解任??どうしてこのタイミング?


メディアでは解任の背景について、大きく二つの要因を挙げる。

一つは、タノ大臣の成果に、ゴン・クリバリ首相が満足していなかったためだとするもの。同大臣は電力セクター、中でも再生可能エネルギー、「みんなの電力イニシアティブ」(Eléctricité pour tous)などを強力に推進し、成果を残してきた。他方、エネルギー、ガスセクターは全く振るっていなかったと報じられる。現在、コートジボワール政府は17の石油・ガス鉱区における採掘事業に関し、民間セクターとの契約を有している。しかしその政府への身入りがあまりに少なく、例えば英国BP社や米国コスモス社との契約では、鉱区ごとにわずか2百万ドルの歳入に過ぎないという。さらに複数の石油、ガス鉱区契約がスタック、あるいは採掘停止に陥っている。クリバリ首相は、この惨状におかんむりだったというもの。

もう一つは、政局によるものという説。すでに過去の記事でも述べたとおり、ここ数ヶ月で連立与党RHDPにおける二大政党、ワタラ大統領率いる大統領与党RDRと、ベディエ元大統領下の伝統的主流政党PDCIが離別。閣内の半数近くを占めていたPDCI出身大臣は「踏み絵」を迫られ、その多くがRHDPにとどまる選択をしていた。

裏切り者には踏み絵を〜コートジボワール選挙結果速報

そのような中、タノ大臣はPDCIの執行部に残ることを選択した。実はここ数週間、タノ大臣のもとには、PHDPから同派に身を置くようデマルシェが行われてきたという。他方、タノ大臣はここ一週間来、自ら「辞任」をする姿勢を固めていたと報ずる向きもある。いずれにせよ踏み絵に応じなかったタノ大臣は、解任の憂き目にあった、という説である。

(野党FPI系'Notre voie'紙は「ティエリー・タノ、ワタラ・ベディエ戦争の犠牲者」と報じた)



後任のアブドゥラマン・シセ大臣は、その名前から明白なとおり、北部出身、マレンケ族。もちろんRDR出身で、2017年7月までは予算担当大臣を務めた。17ヶ月にわたる「休養」を終え、大臣の地位に復帰した。バックグラウンドからは政局の流れでシセ大臣が選出された経緯が指でなぞれる。


さて真実はいったいどちらに。野党PFI系のNotre Voieは「ベディエ・ワタラ戦争の犠牲者」と政局を煽り立てる。


当地12月16日(日)には、地方選挙の出直し選挙が2州6市町村で行われる。ワタラ大統領は、開票結果が揃ったのちに、2年ぶりの大型内閣改造に着手すると示唆している。1月26日にはRHDPが党員大会(Congrès Constitutif)を開催し、有力構成員の「踏み絵」、党員・支持者の結束強化を図った上、RHDP5党による統一会派結成と、ことを運びたい意向だ。

今次の突然の大臣解任劇。あるメディアは「2020年は明日」。また別のメディアは'Ne cherchons pas quatorze heures à midi'(正午に14時を求める必要はない=難しく考える必要はない)。大統領選挙までまだ2年もあるが、政局が過熱する中での解任劇は様々な憶測を呼んでいる。

(おわり)


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