ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

アフリカ進出企業100社に聞きました!「現実と展望」~Jetro意識調査

2014-02-17 07:30:50 | アフリカビジネス
先日、このブログでもお伝えした「2/6(木)ビジネスセミナー「日本企業のアフリカ展開と北アフリカ・サヘル情勢」」。話はもちろんサヘル地域情勢や、企業のリスク管理が中心であったが、冒頭にジェトロの海外調査部中東アフリカ課的場課長より、「日本企業の対アフリカ・ビジネスの現状と課題~在アフリカ進出日系企業実態調査結果から」と題するプレゼンテーションがあった。興味深いのでちょっと中身をご紹介しよう。



この調査、2013年9月に、アフリカ5カ国=南アフリカ、エジプト、ケニア、ナイジェリア、コートジボワールに進出する企業112社より有効回答を得てとりまとめたもの。うち62社は1990年代までにアフリカに進出、残りの47社が2000年以降にアフリカに進出した。

まずはその結果を概観してみよう(ジェトロ配布資料、ジェトロウェブサイトより)。

■在アフリカ進出日系企業実態調査結果 ―魅力ある市場であるとともに、多くの課題も浮き彫りに―

1.アフリカ市場の拡大を背景に、5割以上の企業が2014年の営業利益が「好転」するとの見通し。
・2013年の営業利益(見込み)では、43.4%の企業が「改善」と回答。2012年の調査では、42.5%の企業が過去5年間の業績について「改善」と回答した。一方、2014年の営業利益(見通し)については、これらを上回る53.7%の企業が「改善」と回答した。
・2014年の営業利益が「改善」する理由には、「現地市場での売上増加」(75.9%)が最も多く挙げられ、新規事業参入による売上げ増を期待するコメントが複数あった。


2.約6割の企業が事業を「拡大」の見通し。アフリカ市場での「販売機能」強化を検討。
・今後1~2年の事業展開の方向性では、約6割の企業が「拡大」と回答した。エジプトを除く4カ国に限定した場合、この割合は約7割に上る。   
・拡大を検討している機能では、75.8%の企業が「販売機能」と回答。続く、「地域統括機能」(18.2%)、「生産(高付加価値品)」(16.7%)を大きく引き離した。


3.依然厳しいアフリカのビジネス環境。現場と日本本社間での意思疎通の難しさも課題に。
・経営におけるアフリカ側の問題点として、「政治的・社会的安定性」(98.2%)をはじめ、制度、雇用、インフラ等、ビジネス環境に関する設問のほぼすべてにおいて問題点が指摘された(添付:図表10)。日本(企業)側の問題点では、「本社の理解の少なさ、意思疎通の難しさ」(34.0%)が最も多く指摘された。

4.アフリカ市場での競合相手は、欧州系企業が大きな存在。
・最も競合関係のある企業として、「欧州系企業」(21.8%)と回答する企業が、「日系企業」(28.2%)に次いで多かった。とりわけ、製造業で最多の24.4%が「欧州系企業」を競合相手として挙げた。

5.経営の現地化に取り組む企業の5割以上が現地人材育成強化も、およそ2割の企業は未着手。一方、人員体制は増加傾向。
・経営の現地化にあたっての取り組みでは、52.7%の企業が「現地人材の研修・育成の強化」を図っていると回答。一方で、「経営の現地化をしていない」と回答した企業は20.9%にのぼった。また、現地化の問題点として、「現地人材の能力・意識」(43.5%)、「幹部候補人材の採用難」(37.0%)が指摘された。
・人員体制の見通しでは、48.2%の企業が今後現地従業員数の「増加」を予定していると回答(添付:図表8)。日本人駐在員についても、18.9%の企業が「増加」を見込んでおり、現地の人員体制が拡大傾向にあることが分かった。



■ンボテはこう見る------------

◆間違いなく最も伸びしろのある成長市場
年平均5%の成長を続けるアフリカ。進出する企業はその市場性を実感、アフリカでも十分に安定的利益を営業利益を得ることが可能と楽観している。そして進出した企業の過半数が販売を強化すると答え、強気の事業拡大を目指す。特に十分な人口規模を持ち、また増加率、都市化が進むアフリカは、マクロに捉えれば、間違いなく伸びしろが大きいマーケット。

◆リスクをどう考えるか?
ところが、実際はリスク、事業推進上の障害を抱えての事業拡大、という実態も浮き彫りになっている。その要因として、「政治的・社会的安定性」をあげる企業が多いことは十分理解できるが、「ビジネス環境に関する設問のほぼすべてにおいて問題点が指摘」という下りは、アフリカの現実を物語る。

欧米系セキュリティコンサルタント、コントロール・リスク社が1月に開催した「2014年リスク地図」セミナーでは、企業の直接投資(FDI)が向かう新興国に、治安、事業リスクを抱えた国が集中するという明確な分析結果が紹介された。今後の世界規模での投資拡大にあたっては、リスクの低い投資機会はそもそも限られ、いかにリスクと付き合って行くか、リスクをマネージして行くかが問われてきそうだ。


◆治安以外のアフリカリスク
ンボテのアフリカ経験でも、様々なリスクが身に降り掛かってきたことが回想される。それはセキュリティイシューに限らない。

例えば雇用。アフリカの多くの国ではインフォーマル経済が大きなポーションを占め、雇用体系も十分に整理されていないのが一般的だ。しかしひとたび正規雇用となると、被雇用者は過剰なまでの法的保護を受け、また企業側の税や社会保障の負担も少なくない。さらに労働組合の存在が強く、企業は生産性の低い職員を雇用した場合、そのリスクを抱え続けることとなる。

またリスクの考え方も多様だ。政情・治安による退避や事業の停止は、ビジネス上きわめて深刻なリスクだ。テロや強盗などに遭遇するリスクもぬぐい去れない。

しかしアフリカで結構見落とされがちなリスクは、例えば交通事故のようなもの。これはテロに巻き込まれる確率からすれば格段に高く、しかもひとたび事故が発生すれば、複数名の貴重な人材を一瞬にして失うことも稀ではない。また企業側の安全配慮義務や管理体制が取りだたされる「レピュテーションリスク」にもつながりかねない。

しかし多くの場合、ある程度の対策が可能なのだ。こういったリスクを潰していくことも重要な視点だ。


◆本社、現地のコミュニケーション
他に、調査結果では事業の阻害要因として「本社の理解の少なさ、意思疎通の難しさ」をあげる駐在員が多かった。これはおおいにうなずける。ほとんどの海外駐在経験者が共有する障害であり、ストレス要因といえるだろう。

ンボテもガバナンスが低くて悪いコンゴでそれなりの苦労をしたが、一番ストレスフルだったのは、日本側との温度感覚の格差、日本側の指示、方針と現地事情の不一致によるものだったと回想する。これは海外進出企業の永遠の課題と言えるかもしれない。


◆敵は中国ではない?
現地における競合関係について、多くの企業が「欧米系企業」をあげているのが興味深い。日本のメディアでは、中国や韓国がアフリカを席巻し、日本企業が入る隙もないかのような報じ方をされている。しかしこの調査からは、実際には英仏などの旧宗主国を中心とした欧米企業がガッツリと市場を押さえている構図が明らかになる。

裏を返せば、欧米系企業の比較的高価な商品でも、市場が十分な浸透圧をもっているということになる。進出を考えている日本企業にとってはよいメッセージではなかろうか。


◆グローバル・アフリカ企業に求められる組織・人事マネジメント
そして大きな課題は人材。アフリカ進出企業の多くが、人材の不足、人材開発の難しさと必要性を痛感している。事業拡大に加え、日本人社員に多くを依存せざるを得ない中で、駐在員数の増加を前提としている企業が目立つ。

他方、日本企業、組織の問題点をアフリカ人に聞くと「日本人優先主義」「判断も決定も日本人」「日本語でこそこそ話をしていて、自分たちは疎外されている」というような指摘を耳にすることが多い。日本型組織には地方分権化、あるいは経営のローカライゼーションといった課題があるといえるかもしれない。


◆まとめ
アフリカ進出企業の意識調査。いろいろ課題を抱えつつも、収益性、成長性にかけようという企業が多く見られる。そして拡大市場にリスクはつきもので、これとどううまく付き合うか、実践の中で学んでいくことが求められている。

そういった意味で、アフリカビジネスの可能性とリスクは、進出しなければわからない、進出してはじめてその対処がわかっていく、とも受け取れる調査結果だと感じた。

(おわり)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。