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夢のインガ計画、実現に動くか?〜アフリカのエネルギー事情(2)

2018-10-21 10:00:00 | アフリカビジネス
なんだかギャラクシーな計画っぽい名前のタイトルながら、アフリカのエネルギー事情シリーズから少々。

電力に飢えるアフリカ。そんな中でもっとも大きく、現実的なポテンシャルとして捉えられているのが、水力発電だ。近年でもカメルーンのロンパンガ、ギニアのカレタ、コートジボワールのスブレなどの水力発電所が実現されているが、一番ポテンシャルに優れていると捉えられているゾーンは、なんといっても南部アフリカだ。特にコンゴ民主共和国のインガと、モザンビークのカオラバッサは二台双璧。アフリカにとって化石燃料に頼らない、また経常負担の少ないエネルギー源だ。

特にインガダムは、長年「夢の計画」と捉えられてきた。世界第二位の流量(4万立米/秒)と流域面積、アフリカ第二位の長さ(4.700 km)をもつと言われるコンゴ川。特にコンゴ民主共和国西部に位置する首都キンシャサと河口に近いマタディの間は激しい急流が下る。この流量と落差のエネルギーから電力を生み出す水力発電だ。

歴史は1920年代、ベルギー領コンゴに遡る。当時の国王、アルベールII世は植民地総督府にインガダム開発のための調査を下命するが、世界恐慌により計画は中断。その後第二次世界大戦を迎え、計画は実現しなかった。

ブリュッセルが実現に向けて再び動き出したのが1958年だったが、再び暗礁に乗り上げた。1960年にはコンゴが独立、それとともに動乱に巻き込まれていったからだ。実現したのは悪名高きモブツ大統領の就任後、この国が国名をザイールと変えてからだった。そしてインガ第一ダムが1972年に、第二ダムが1982年に稼働を開始した。それぞれの発電容量は351 MWと1424 MW、しめて計1775MWという規模になる。そしてその電力はとおく同国南東部のコッパーベルト・カタンガ州、はたまたアンゴラ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビアを灯し、南アフリカまで運ばれている。

ンボテも実際見に行ったことがある。圧倒される規模のダム。しかしそれ以上に、その巨大なダムでさえ、コンゴ川のほんの一部の水しか使っていないということに驚かされた。

インガ計画、実現しているのはここまで。この先、6次に渡るグランインガダムが完成すれば、桁違いの39GWの発電容量が実現される。黒部ダムが33.5万キロワット、中国の三峡ダムが18.2GW。そのスケールの違いにびっくりする。すべてのインガ計画が実現すれば、その電力はアフリカと地中海全てを灯して有り余ると言われている。

しかしそれもちゃんと操業できれば、の話。メンテナンスや運用上の問題から、現在のインガI、IIでも運転状況は設備容量の20%にとどまると言われる。またアフリカ各国を灯すインガの電力だが、お膝元のコンゴ人には5%しか供給されていない。


夢の計画インガ。その第一弾となるインガIIIの建設に向け、これまで国際的なマイニングコングロマリットBHPビルトンを始め、ナイジェリアのNEPA、南アのESKOMなどが準備的な先行投資を始め、一歩一歩計画は進んできた。その矢先。

10月16日、コンゴ民主共和国政府は、中国・スペインの企業体とインガIII計画開発にむけた独占調査権合意書に署名した、と発表した。

(Jeune Afriqueウェブサイトより)


合意を結んだのは、中国企業は三峡ダム公司を中心とした「China Inga III」と名付けられたコンソーティアム。一方のスペインは、スーパーゼネコンのACS(Actividades de Construcción y Servicios S.A.)社を中心とした「Proinga企業体」。ACS最高経営責任者のフィオレンティーナ・ペレス氏は、かのサッカークラブ、レアル・マドリードのオーナーでもある。

「この合意書は、計画実現に向けた調査に関する資金を開発者が準備する合意。」と政府当局。コンゴ政府は昨年、同事業開発権取得を目論む両者に対し、一つの企業体を構成するよう要請していた。今次の署名でそれが実現した。

政府プロジェクト担当者ブルノ・カパンジ氏は「同事業が想定する開発規模は11,000 MW、想定事業投資額は 139億ドル、建設期間は5年から7年、最長で11年と見込まれる。政府としては今年にも建設に着手して欲しいと思っている。」


アフリカを灯す夢のインガ計画。これで本当に前に進むのだろうか。いくつもの同様の動きがありながら、その巨大な規模と、大きな利権に、事態は大きくは進んでこなかった。大統領選挙に揺れる政局と、バッドガバナンスの汚名。世銀を始め主要ドナーが支援を手控える中、民間資金とはいえこのタイミングでのインガ開発の合意は、「火事場のなんとか」とも映らなくはない。

そして民間資金主導の開発、完成した暁には、銅、コバルト、アルミニウム、鉄など様々な産業界にエネルギーをくべるものと期待をされている。しかし高圧送電線を指を加えて見上げるコンゴの人々の生活にこそ、生きる電力であってほしい。

(おわり)


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