ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

テロ構造ピラミッドとジハード首謀者プロファイル〜国境を超えた研究会による示唆(1)

2018-12-02 08:10:00 | アフリカ情勢
テロの脅威はもはや地球上のどこにいても逃れられない。ンボテブログ『ぶら★アフ』でも繰り返しテーマにしているとおり、ここ西アフリカしかり。マリを震源とするテロの脅威は目に見えないながら、あまりに距離的に近く、またコンテクスト共同体の中で他人事とは思えない身近さがある。

そんな中、当地では休日をおして、とある研究の発表が密かに行われた。西アフリカ国境を越えて、どうテロと向き合うか。テーマは西アフリカにはどのような暴力的過激主義の社会的構造が存在し、どのような勢力が浸透・感化を与え、そして今後、どのようになっていくのか。

研究会そのものの内容は機微に触れるので明らかにできないが、いくつか差し支え無い範囲で断片的な情報を少しばかり並べてみたい。


はじめの図。西アフリカで若年層がテロ勢力に至るまで、また社会的な不安や不満が暴力的過激主義に至るメカニズムについて、当地関係国の治安当局が行なっている分析だ。



根底には社会からの隔絶、貧困があり、それが社会に対する不満と疎外感、不満を構成。抵抗運動に及ぶと、それがいつしか激化し過激主義に。その末にテロ行為に及ぶという。ゆえに、政府や社会が、よりピラミッドの低い段階でアクションを起こさなければならない、というもの。なにも目新しい議論ではないが、西アフリカ諸国ではほぼここに有効な手を打てていない。当局もそれを自認している。結論としては、治安アプローチの限界が指摘され、開発や社会からのアプローチが必要ということになるのだが、この解決には非常に長い時間を伴う。そして総合的な政策推進、調整能力が求められるのだが、これも西アフリカ諸国は極めて低いレベルに留まっている。



次に西アフリカにおいてマークすべき、影響力を持った暴力的過激主義の首謀者についてである。



ほとんどがマリに本拠をもつテログループであり、特に左上のアンサール・デイーンの首謀者、イヤド・アグ・ガリは長年、指導的地位を発揮してきたことでおなじみだ。

マリ・サヘルの異変、イスラム武装勢力の合併

ここではその他、国際的なレベルではあまり耳にしない、しかしサヘルのコンテクストでは重要な人物の名前が並ぶ。

オマル・ウルドゥ・ハマハは、マグレブ諸国ののアルカイダ(AQMI)、西アフリカ統一聖戦運動(MUJAO)、アンサール・ディーン、血盟団(Signataires par le sang)、アル・ムラビトゥーンなどを渡り歩いたアラブ系マリ人の鉄砲玉。スライドでは「マリのアンサール・シャリーア」として紹介されている。赤ヒゲの異名を持つ。通な方なら歩みを見て分かるとおり、モクタール・ベル・モクタールと多くのテロを共謀した。2014年にフランスのサーバル作戦により、マリ北部、テッサリで殺害されている。

アブ・アブデル・アキム・アル・キダリは、AQMI、のちイスラム・ムスリム支援勢力(Groupe de soutien à l'islam et aux musulmans: GSIM)でジハードを先導するトゥアレグ系マリ人。セダーン・アグ・イタが本名で、元々はマリ国軍の上級曹長だった。

右上のアマアーグ・アマはンボテは耳にしたことがなかった。前出のモクタール・ベル・モクタールの義父にあたり、2014年3月に仏軍作戦により殺害されたという。すでに殺害されているにもかかわらずこの数人のリストに入る重要人物として扱われていることが気になった。

中段右はこのブログ『ぶら★アフ』でも頻出、マシーナのカチーバ首謀者で、マリのプル族にテロを内製化させたアマドゥ・クファ。数日前、マリ国軍がテロ掃討作戦で殺害を発表、仏国防相もこれを認めた。

マリ中部のテロ勢力首謀者、アマドゥ・クファを殺害〜ジハードの内製化は止まるか?

最後に注目は右下のイブラヒム・ディコだ。上述のアマドゥ・クファに近い人物とされ、2015年頃からアンサール・ディーンの活動に活発に関与した。問題は彼がブルキナファソ人であるということだ。クファと同じプール族で、生まれは同国北部のジボである。マシーナのカチーバと共闘関係にあり、2016年にはアンサール・イスラームを創設。ブルキナファソにおけるテロの内製化が萌芽した。そして2017年にマリで殺害された。彼はサヘル情勢において非常に重要なので、また別に特集記事を書きたいと思っている。

ここで重要なのは、西アフリカ諸国がもっとも恐れているのは、テロ勢力の侵入ではなく、自国内におけるテロ勢力の萌芽、内製化なのである。先ほど見たようなテロ構造のピラミッドが存在する中、ジハードの内製化は、まさにマリがたどった最悪のシナリオであった。


研究会での論点は、文字面にすると目新しさはないが、当地西アフリカ、サヘルのコンテクストに照らして具体的な理解に努めると、そこには非常に深い意味内容が込められていることが感じられる。そして、席上紹介された、もう一つ重要なスライドがあった。

(つづく)


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